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プロの投資家も「損した」と公言しないだけで、結構痛い目にあっている

 アメリカの有名な格言に、「株式投資で大事なのはタイミングではなくて、タイムだ」という言葉があります。つまり、どれだけ長い時間、株式市場にい続けるかが大事だということです。株価が上がったところで売って、下がったところで買ってと、タイミングよく売買するというのは、口では簡単に言えるが、実際にはそれをうまくやれる人はほとんどいない。年金基金のような世界有数の運用会社でも、うまいタイミングでの売買はできないというのが常識です。プロの投資家もみんな、「損した」とわざわざ公言しないだけで、実際には結構痛い目にあっています。

――あまり、その時々の「株価」に一喜一憂すべきではないと。

 心が一喜一憂するのはいいけれども、余計な売り買いをすべきではない。

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 これは投資を始めたばかりの人が陥りやすい思考法なのですが、今、日経平均が3万円になったことをもって、「昨年3月の、株価1万6000円台のときに買っとけば儲かったのに」と思うのはよくない。それは今だから言えることにすぎない。

 昨年3月の1万6000円の時点ではそれよりもっと株価が下がる可能性もあった。原則論として、その時々の株価にはその時点の市場参加者の将来に対する予想が反映しているので、いつの時点で株を持つとしても、有利・不利はないのです。つまり、「いい時」は分からないので、いつ投資してもいい。

©iStock.com

金融機関のカモになりやすい人の思考法とは

――では、具体的に株式投資の初心者は、今はどういう買い方をすればいいのでしょうか。

 まず投資をするうえで初心者であるかどうかは何も関係がないと知るべきです。初心者向け投資というものがあり、そのレベルをマスターしたら、次はベテラン向けの投資があり、さらに次のステップとして富裕層向けの投資がある、というようなイメージを持つのはよくない。レベルが上がるよりよい投資方法があると考えるのは、金融の世界では、田舎臭い恥ずかしい考え方です。そう考える人は金融機関のカモになりやすい。初心者でもベテランでも、富裕層でも、庶民でも、投資にあっては、共通の「一番効率のよいことをする」だけが正解です。

 では、一番効率が良い方法とは何か。先ほども述べた「ずっと持ち続けること」を実現するためには、1銘柄だけに絞って株を買うようなことは避けるほうがいい。

豊田章男氏 ©文藝春秋

 例えば、トヨタやファーストリテイリングだって、今は絶好調でも未来永劫に安全な株かは誰にもわからない。電気自動車の分野で競争に敗れてトヨタが没落する可能性だってないとは言い切れない。

 つまり未来に起こることは分からない。だから、リスクはできるだけ分散しておくのがいい。この原則はプロも初心者も共通です。