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「刑務所内では風呂の際に全員が裸になるため、刺青はすぐに目に留まる。ある時、誰もが知るある組織の大幹部が入ってきたが、風呂の際にその幹部の背中には何もなくて意外に思ったことがある。それでも確かに、大物ヤクザとしての風格を感じたものだ」
腐乱した遺体でも刺青は残っていた
暴力団員と切っても切り離せない存在ともいえる刺青。この刺青が、警察の捜査において大きく貢献したケースがあった。かつて暴力団犯罪の捜査を指揮していた警察当局の幹部OBが振り返る。
「昔の話だが、ある山中で殺害された暴力団幹部の遺体が見つかった。ほぼ腐乱していたが、背中の刺青はかなりきれいに残っていた。
現在ならDNA型鑑定などで遺体の身元を間違いなく特定できる。だが、当時はそのような科学的な方法はなかったから、『背中の刺青で身元を特定できるのではないか』と彫師にあたった。すると、ある彫師が『自分がこの刺青を入れた』と話してくれて、被害者の身元を特定できた」
前出のベテラン刑事も、同じ体験をしていた。
「かつて暴力団同士のトラブルがあり、あるヤクザの所在が分からなくなった。別のヤクザの自白で『殺してある山中に埋めた』と分かり、供述通りに地中から遺体が出てきたのだが、その遺体はほぼ全身の腐乱が進んでいたのに、なぜか背中の刺青だけは柄が分かるほどそのままだった。刺青として入れられた色素だけが腐らず残ったのかもしれないが、不思議なものだと思った」