けれど、ここはサバンナじゃないし、昔と違って私たちは今、群れて生活しているわけじゃない。今では1秒でも早く金縛りを解いて攻撃してくる相手に反撃をしなきゃいけない。固まったままでいる方が危ないじゃないか。
(どうにかして怒鳴られたショックで固まるのを防げないだろうか……)
そして色々と試行錯誤をした結果、一番効果的だったのはちょっと驚くぐらいに単純な方法だった。
足を整えると心も整う?
いきなり怒鳴られてビクッと体が固まってしまったら、その瞬間思いっきり足をつねる。もしくは足の小指をもう一方の足で踏んづけるなどして、下半身を刺激するのだ。
(痛っー!!)と感じると同時に、怒鳴られたショックによる金縛りは解ける。そこからお客さまに反撃することができるのだ。
いやちょっとその方法は……と思われるかもしれないけど、これはずっと怒鳴られて言い返せなかった私を救ってくれた画期的な方法なのだ。直接つねったりしなくても足を踏ん張るだけでもだいぶ違う。
これまた図書館で発見した有名な動物学者のデズモンド・モリス氏曰く、「下肢(つまり足)には本当の気分が表れやすい」らしい。不安な人は足が落ち着かないし、足を広げている人は偉そうな印象になる。
実際、お客さまとの間にクレームを起こしたり、相手に言い負けてしまうオペレーターさんは、足元が落ち着いていないことが多い。オペレーターブースの後ろからオペレーターさんの足を見ていて、足をぶらぶらと浮かせていたり、足を組んだりしているオペレーターさんは、トラブルを起こす確率が高かった。
逆も真なりで、足を整えることで心も整えることが可能なんじゃないだろうか。
いきなり怒鳴られてショックで固まってしまったら、グッと足に力を入れて踏ん張ってほしい。そうすることで早く金縛りを解くことができる。そしてお客さまに即座に反撃を開始できるのだ。