押しつけはしませんけど、いいものだと思いますよ、恋愛って
――今は「恋愛をしなくていいという選択肢」がある時代で、恋愛アンチを掲げる人も増えているように感じますが、いかがですか。
東村 また漫画の話になりますが、漫画の世界でも恋愛を前提にせずグルメとか女性が一人で生きていく楽しみを描いたものが多くなっています。大人の女性向け漫画でも、恋愛よりもリアルな日常を描いた「うちの夫がこうなんです」という作品や育児もの、エッセイみたいなのが多くて、恋愛要素がからむ作品となるとジャンルがレディースコミックになってしまったり。大人の女性が主人公で、少女漫画のようにときめける恋愛漫画って、新作ではあまりないのが現状なんです。中高生向けの恋愛漫画ならあるんですけどね。
仕事関係者の中にも30代で独身の女性が多いんですけど、そういう大人の女性たちにもぜひ読んで「初恋」を思い出していただきたいです。
恋愛なんかしなくてもいいんですけど、してもいいですよね。押しつけはしませんけど、いいものだと思いますよ、恋愛って。
「いい男がいないから恋愛できない」と思っている人は、「目の前にいる人のいいところ」を探してみたらいい。幸せって、そういう人に寄ってくるものなんじゃないかと思います。
スーパーボールをモチーフに使った理由
――『わたおぼ』では、子ども時代に遥がこうちゃんからもらったスーパーボールが幸せのカギを握っているように思います。スーパーボールをモチーフに使ったのは、何か特別な思い出などがあるのですか。
東村 スーパーボールって、私が子どもの頃お祭りの出店とかですごく人気があったんです。特に、大きくてキラキラのスーパーボールは宝物的存在で、みんなの憧れのアイテムでした。
キムタクが主演の『ロングバケーション』というドラマでも、すごく印象的に使われていましたよね。マンションの3階から落としたスーパーボールをキムタクがキャッチするというシーンは1996年当時、すごく話題になりましたが、いつか何かに使いたいなと思ってました。
スーパーボールって、温めるとよく跳ぶんですよ。何人もの手で温められたスーパーボールがどんなふうに「跳んで」いくか、最後まで関わってくる重要なアイテムなので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。