民間人との食事自体は、官僚にとって必要なもの
僕自身もそうだけど、周りの官僚たちも利害関係者であろうがなかろうが、民間の人と会食する場合は割り勘にしておくのが普通だった。実態を理解して政策をつくるためには、役所の外の色々な人たちと会って話をしないといけないし、時に食事になることもある。食事は不要と思う人もいるかもしれないが、僕はそう思わない。セクターを超えて社会を一緒によくする仲間になる必要があるからだ。
ほとんどの場合は、相手が無理にご馳走しようとはしなかったし、ちゃんとした企業の人たちはそれが分かっているので、最初から「割り勘で」と言ってきてくれる。
まれに、どうしてもご馳走しようとする人に会ったこともある。それは、僕にご馳走して何か利益を得ようというよりも、そうするのが礼儀だ、当たり前だという民間の感覚でそうしていることが多い。利害関係者ではなかったと思うが、どうしても断れなかった時があって、先輩に相談して現金書留で送るというやり方があるよと聞いたので、そうやってお返ししたこともある。
民間と官僚のルールの衝突
役所を辞めてからは、民間の文化の中で仕事をしているけど、仕事関係の会食で割り勘ということはあまりないということが分かってきた。民間企業には、接待費もあるし、税法上も一定の条件の下で経費として認められるのだから、法律も業務上必要だと認めていると言える。一方で、役所には接待費というものがないし、利害関係者からの接待は禁じられていて、割り勘にする必要がある。割り勘にすると、企業も会社の接待費を使えないとすれば、自腹になってしまう。
接待の問題のほとんどは、行政をゆがめるということよりも、こういう民間の文化と霞が関のルールのぶつかりの問題だ。ここが、官僚の接待のルールと運用の難しいところだと思う。今回のことを機に国家公務員への研修も強化されるのだろうが、せっかく官僚への接待に注目が集まっているので、民間企業の人たちにも周知するよい機会だと思う。