警察組織とはかくも冷徹な組織だったのか。一つの人事情報が、驚きと恐怖をもって霞が関を駆け巡っている。2020年度に警視庁捜査一課長だった渡会幸治新宿署長に2月5日、「警務部付」とする異例の人事異動が内示されたのだ(15日発令予定)。警視庁や警察庁がある東京・霞が関は目下、この話題で持ちきりだという。
その原因は「文春砲だった」と警察関係者が口を開く。
「渡会さんが新宿警察署長になった直後の昨年4月、週刊文春(2020年4月23日号)に『不倫略奪婚』疑惑がすっぱ抜かれました。奥さんと離婚して不倫関係にあった部下の女性と再婚したばかりか、その部下を自分がいた捜査一課に異動させる『情実人事』を行ったという内容でした。本人は内部調査で不倫を否定しましたが、問題視した上層部による切り捨て人事であることは間違いありません」
「花の新宿署」で、たたき上げ最高の栄誉あるポストに
約700人の職員を抱え、日本最大の警察署である新宿警察署は「花の新宿署」と呼ばれ、その署長は警視庁のたたき上げが就ける中でも最高に栄誉あるポストとされる。その署長に渡会氏は有数の若さで就任している。
渡会氏は18歳で警視庁に入り、捜査一課にはオウム真理教による地下鉄サリン事件があった1995年に初めて所属している。以来、刑事部門を歩き続け、幹部になってからは警察庁刑事局にも出向した「たたき上げのエリート」だ。53歳で念願の警視庁捜査一課長になってからは、階級も国家公務員である警視正になっている。猫を何匹も飼い、高級な将棋の駒の収集家でもあった。