一度だけ経験した「高額の贈り物」
このような民間の文化と霞が関のルールのぶつかり以外に、意図的と感じるケースもあった。僕の経験の中では一度だけだが、民間企業の支援をする仕事をしていた時に、仕事の中で面会した際に、高額の贈り物を置いていかれたことがある。先方が帰ってから気づいた。この時点で、「これは怪しい人達だな」と思って付き合うのは止めたし、依頼も無視した。贈り物は送り返した。正直、迷惑以外の何物でもない。
ほとんどの官僚は接待とは無縁
僕ら世代以下の官僚たちはルール以上に、接待というものから距離を置いているが、幹部クラスの官僚になると、相手の社会的地位もすごく高いので、自ずと行く店のレベルも上がるのだろう。夜、人と会って会食する機会も多いと思う。それも仕事のうちなのだろう。官庁の場合は、企業と違って交際費というものがないので、利害関係者以外も含めて、すべてを割り勘で自腹にするというのは難しいのかもしれないが、当然ながらルールに反して利害関係者から接待を受けるのは許されないことだ。
今回の事案が、行政をゆがめているとしたら単なる倫理規程違反では済まされない大問題だが、それは現時点ではわからない。確実に生じている別の悪影響を指摘したい。
今の社会課題は霞が関だけでは解決できないものばかり。今回の件が、官僚たちが民間の人と接点を持つことに委縮するようなことにだけはなってほしくない。
また、ほとんどの官僚たちは接待などとは全く無縁の環境で日々遅くまで働いている。今、「ブラック霞が関」と言われるような過酷な労働環境の中で若手の離職が急増している。それでも社会のために働きたいと踏ん張っている人たちがたくさんいる。そういう人たちの士気が大いに下がるのが心配だろう。また、官僚志望者が激減している中で、ますます官僚という職業のイメージが悪くなってしまうのも大きなマイナスだ。
一見、国民には関係ない話と思うかもしれないが、これ以上霞が関が疲弊していけば、政策立案能力は落ち、ミスもどんどん増えていくことは間違いない。