1ページ目から読む
2/6ページ目

大スター本田圭佑さんと俺たちの溝口勇児

 あらましで言えば、日本サッカー界の大物現役プレイヤー・本田圭佑さんが、投資界隈に進出してきてそのスポーツでの成功と鍛えた前向きな精神であっという間に投資界隈のスターダムにのし上がります。この世界は本人のビジネスマンとしての能力よりもコネと豪運が大事なので、それを備えているというのは素晴らしいことなわけですね。

 手がけた投資がいきなり上場して成功することで、実績もつき軍資金も出してもらえるということで、周囲にいろんな大人が集まってきて日本のベンチャー界隈における一大エコシステムが成立します。

 もちろん良いことばかりではなく、投資の観点からすれば筋の悪そうに見える酒類販売の事業投資をしたり、投資プレゼンでは本田圭佑さんの出資はどれも少数・少額なものばかりに見え、いわゆる「いっちょ噛み」批判はそれなりにあります。あまり資金のつかないネットサービス業方面のシード系投資に躊躇なく踏み込んでくるため、そういうリスキーなカネの使い方をしたくない大人からは評判がよく、半導体や計算機工学のような分野で100億円単位の大規模投資を最初からしなければならない界隈からはまったく相手にされていないという特徴のある投資家です。

ADVERTISEMENT

 いわゆる「ビジネスの仕組みよりも、人物を見て突っ込んでくるタイプの投資家」の筆頭である本田圭佑さんは、その人物鑑定が上手くいけばバッと派手な投資成果を挙げるし、今回のように「生きのよい若者」と思って乗り込んでみたら思ってたのと違ったという話になると光の速さで高速瓦解するあたりがお茶目であります。

©iStock.com

 で、その本田圭佑さんのお眼鏡にかなって、一連のスターばっかり投資ファンドを任されたのが俺たちの溝口勇児さんです。非常にアグレッシブで野心的な若手経営者である溝口さんは、精緻に積み上げたビジネスモデルで事業を転がすというよりも、「これをやれ」「俺についてこい」的な組織力ドリブンで事業を切り開き経営を成り立たせるタイプの人物です。経営者としての能力は高いのかもしれません。

 以前、溝口さんが創業し、そしてある種の追放にあってしまった事業においては、溝口さんの考えが時流にフィットし追い風のときにはもの凄いパワーを発揮して成長する一方、組織的な成長で歪ができて立ち止まらなければならなかったり、ビジネスで良くある系のトラブルへの対処を強気にすることで問題がむしろ大きくなってしまい「卒業」しなければならなくなった経緯があるように感じます。

 そんな溝口さんの卒業後フリーにおいて声をかけた本田さんは、溝口さんの光の面を見ていたのかもしれません。ところが、実際に起きたことは溝口さんの経営に対してパワハラの告発あり、不正な資金の使途ありとの指摘もあり、ベンチャー企業あるあるの見本市であったように見受けられます。

組織が高速崩壊、岩本有平さんに問題をすっぱ抜かれる

 そんな火薬庫のような状態で、上からガソリンとダイナマイトを投げ込んだ勇者が登場します。その名も俺たちの岩本有平。あくまで日本のスタートアップ界隈のガバナンスに問題提起をする体裁を取りながらも、事実関係を丁寧に並べてトロ火でじっくりと豚を360度丸焼きにするような報道のスタイルに感動を覚えます。

 話の内容は、要するに本田圭佑さんに見いだされ他の投資家も集まって8億円ほどの資金を元手にベンチャー企業への再投資と経営支援をやるはずだった溝口さんのWEINは、実は投資した先から経営指導料・コンサル料的な名目で資金を吸い上げ直し、また、溝口さんの個人でやる物件の内装費をごまかすような背任ライクな行為があるうえ、溝口さんのパワハラ体質的な問題もあって社員に退職者がゾロゾロ出て、見かねた他の経営者が溝口さんを吊るし上げ退任を迫ったよというものです。

©iStock.com

 もうこの時点で結構高カロリーで胃がもたれるんですが、ポイントなのは、投資された金額はたった8億円とはいえ概ね投資家などの外部からのカネであることです。ベンチャー投資や支援を目的として投資家からおカネを集め、投資した先から経営指導料として、投資済みのカネを巻き上げるというのは、まさしくアントニオ猪木が求めた永久機関のようなものです。投資元である溝口さんのWEINと、WEINの投資先であるベンチャー企業がいつまでもおカネをグルグルできるという最高な仕組みなのであります。

【独自】「スタートアップのガバナンスに一石を投じる問題」挑戦者支援のWEINが崩壊──本田圭佑氏らもすでに退任|DIAMOND SIGNAL
https://signal.diamond.jp/articles/-/588

 この記事内容に、同じく本田圭佑さんと投資を行ってきた元コロプラ社のエンジェル投資家・千葉功太郎さんも「この記事の内容は事実です」とTwitterで追認。ベンチャー界隈の一角で経営者セミナーなど経営指導・支援を行う千葉道場を営む千葉さんの証言もある一方、溝口勇児さんはTwitter上で一連の記事による疑惑を完全に、完璧に全否定します。