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2021/03/01

で、我が国のスタートアップ界隈なんですけど

 今回は不幸な事件だったと思うんですよ。正直、ベンチャー投資の世界で言うならば、投資をしてみたけど鳴かず飛ばずというのが大半です。10社投資して1社上場したりバイアウトできればファンドとしてはペイなのである、という考え方が主流であるため、今回のように総額でも8億円ぐらいの小さな規模の投資では、むしろ「追加投資とか考えることなく、いきなりコケて良かったね」というレベルの話なんじゃないかと思います。

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 ただ、出てきた名前がいちいちビッグネームなので、例えば今回の溝口勇児さん追い出し劇で中心人物になった経営陣の一人、元ノーリツ鋼機の西本博嗣さんってそもそもどういう人だったんでしたっけ、というような古傷を愛でる動きがネットで広がってしまうのも事実であります。

 そういうキラキラした人たちが会社での資金の使途ひとつで仲間割れし、大揉めし、泥仕合になり、汚物の投げ合いの果てに全身汚物まみれになる一部始終を見るにつけ、無関係の野次馬からすれば「いいぞ、もっとやれ」と囃し立てるのが見物客の流儀であることは言うまでもありません。

 一方で、いわゆる日本のベンチャー界隈は二分しており、「日本はなぜビル・ゲイツやジョブズを産み出せないのか」とかいう謎の問題提起が繰り返される中で、上層部では千億単位の研究開発費を慎重に積み上げる事業開発が、底辺では本件のように数千万、一桁億程度のベンチャー投資が幅を利かせ、インナーサークルを作って内輪で案件を回し合って株式上場ありき、あるいは高額のバイアウトで現金化というしょうもない世界が広がっています。

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 もちろん、東証一部上場や海外市場での株式公開に漕ぎ着ける企業も中にはいるのですが、ひとつのあたった事業だけで上場するような一本足打法にならず、国際的な競争にも立ち向かえる企業体を育成するという考え方からすれば、日本のベンチャー投資の方法論はある意味でコネと男芸者の世界になり果ててしまっている感はあります。

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