僕らが選んだ3人育児という可能性
自然妊娠の可能性がない僕たちが子供を持つための手段は2つ。誰かに産んでもらった子を何らかの形で引き取るか、彼女が自分で出産するか。
彼女は「できるなら自分で産みたい。でも、全く知らない人から精子提供を受けるのは怖い」という。
じゃあ友達の誰かに頼むのがいいかな? と考えてみたが、性的指向がストレートの男性だとどうしても僕が嫉妬してしまう。
そこで行き着いたのがゲイの友人から提供を受けるという選択。その中で最有力候補に挙がったのが、ゴンちゃんだった。彼との間にはLGBTQの活動を通じて築き上げてきた、ゆるぎない信頼関係がある。
精子を提供する親友の言葉
ただ精子提供を受けるだけではなく、3人で育てるという考えに至ったのは、ゴンちゃんの中にある子供を持つことについての想いに触れたことが大きい。
「子供は好きだけど、現状の日本の制度ではゲイである自分が親になることは難しい」
「精子を提供するのなら、その責任として自分も子育てに関わりたい」
そこでふと思ったのだ。ゴンちゃんが僕や彼女と一緒に、子供を育てるという生き方もアリなんじゃないか? この方法なら僕たちだけでなく、彼の願望も叶えられるのではないか?
以来、僕は少しずつ、僕と彼女とゴンちゃんの3人で過ごす時間を増やしていった。そして僕以外の2人が徐々に打ち解けていく様子を見て、こう確信したのだ。
僕たちなら大丈夫。病める時も健やかなる時も、ともに子供と歩んでいける。
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text:Lemon Mizushima
杉山文野 Fumino Sugiyama
1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院にてジェンダー論を学び、その研究内容とトランスジェンダーである自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』(講談社)を出版。東京レインボープライド共同代表理事。フェンシング元女子日本代表。
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