〈リードをもって散歩〉
インターネットで、「亡くした犬のリードをもって散歩する」という方法が紹介されていたので、私も試してみた。カバンにリードをつけて実際に犬と散歩したコースだけでなく、行ってみたかったけど行けなかった場所などを歩き回った。特に亡くした直後は、歩いている間だけは気分が紛れるので、2、3時間歩くこともザラだった。確かに一定の効果はあったように思う。
〈新しい子を飼う?〉
「ペットロスを癒すには、新しい子を飼うしかない」。よく言われることだが、前出の濱野氏はこう語る。
「確かにそれで癒される人もいるのですが、私はおすすめしません。悲しみから立ち直るという過程まで含めて、ペットと過ごす時間だと思いますし、そこを経て人間的な成長を遂げる人も多い。その過程をパスしてしまうと、また別のペットロスを抱え込むだけになってしまいます」
ペットが生きている間にできるたったひとつのこと
このように、ペットを亡くした後の喪失感への対し方は人それぞれだ。
だが、ペットが生きている間にできることは、実はたったひとつしかない。
「一緒に暮らしているときに存分に愛情を注いで楽しむこと。愛情が深いと亡くしたときの悲しみも深くなりますが、『楽しい思い出』『温かい思い出』が、やがて喪失の悲しみを癒す助けになります」(同前)
「出会ったときのこと、楽しかったこと、たくさん話しかけて、撫でて、出会えた幸運を噛みしめながら、その子と向き合って1日1日を幸福に過ごすことに尽きます」(前出・阿部氏)
積み重ねた幸福の記憶は、後できっとあなたを助けてくれる
ミントを亡くして9カ月が経った。最期の瞬間を看取れなかった後悔は、今もチクリと胸を刺す。話を聞いた人のなかには「10年以上前に亡くした犬のことを思い出さない日はない」という人もいたが、この喪失感が完全に消えることはないのだろう。それでも、喪失感と幸福感との間を振り子のように揺れ動いていた思い出は、時が経つほどに幸福感の側にとどまる時間が増えてきたようにも思う。
なぜ先に亡くなると分かっているのにペットを飼うのか――その答えも自分なりには少し見えてきた。
ペットを飼っている人は、家に帰ったら、ぜひ撫でてみてほしい。その幸せは手に触れることができる。積み重ねた幸福の記憶は、後できっとあなたを助けてくれるはずだ。