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秋田県民が本気で考えた――秋田にプロ野球球団を誘致すべき4つの理由

文春野球コラム ウィンターリーグ2021

2021/03/02
note

「人が少ないから集客力が劣る」と決めつけるのは早計だ

(3) 秋田に対する国政の影響力が大きい時期である

「16球団構想」の発端は、2014年に自由民主党が「日本再生ビジョン」の中で地方創生の起爆剤として政策提言したことにある。

 つまり、政権与党の中心に「秋田県に影響力を持つ政治家」がいる状況ならば、円滑に球団を新設するために秋田県を候補地とする意味は非常に大きい。

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 とはいえ、いま秋田県出身で国政の中心を担う政治家なんて……

菅義偉首相 ©文藝春秋

 いるぞ! 菅義偉内閣総理大臣が! 秋田県立湯沢高校卒、秋田県出身者初の宰相が!

 あわよくばもう1名、秋田県から選出された自民党議員のなかにスポーツに詳しい人物、欲を言えば元プロ野球選手がいればもう秋田への新設は決定したも同然である。しかし、そんな都合のいい政治家が……

 いた! 石井浩郎参議院議員が! 秋田県立秋田高校卒、近鉄-巨人-ロッテ-横浜の元選手が! 1994年のパ・リーグ打点王が!

 これほど新球団設立に適した条件が揃っていることに、果たして現政権は気付いているのだろうか。他の地域との比較はもとより、タイミング的にも憲政史上またとない好機である。

(4) スポーツ熱が高く、集客力がある

「でも、秋田って人が少ないからお客さんが呼べないじゃん……」

 そうお考えのあなた! 今からそのイメージを覆す。

 確かに、秋田県の人口は現在約95万人、かつ県内に人口10万人を超える自治体は秋田市しかない。秋田市にしても人口約30万人と、プロ野球チームの本拠地としては小規模な都市である。

 だが「人が少ないから集客力が劣る」と決めつけるのは早計だ。

 近年成長著しい男子プロバスケットボール・Bリーグのトップカテゴリ・B1の昨期の平均観客動員数をチーム別に比較すると、なんと秋田市を本拠地とする秋田ノーザンハピネッツは大阪市(大阪エヴェッサ)や横浜市(横浜ビー・コルセアーズ)といった大都市のチームを上回り、B1全体でも上位の数字を叩き出している。

 言うまでもなく、これらの都市はプロ野球チームの本拠地でもある。バスケで互角以上の集客ができるということは、秋田県は人口に関わらずプロ野球チームの本拠地としても高い集客力が期待できるのではないだろうか。

「秋田ではバスケ熱のみが高いだけでは」というご指摘にも当たらない。

 2006年にTDK硬式野球部(にかほ市)が都市対抗野球で優勝し、2018年には夏の甲子園の「金足農旋風」に酔いしれた。そんな秋田県民の野球熱が低いわけがない。

 今年から男子サッカーのブラウブリッツ秋田がJ2に昇格し、男子バスケのハピネッツはB1で戦い続けている。新たなプロ野球チームがここに続く姿が、僕の目にはハッキリと浮かんでいる。

 決して、秋田のおいしい日本酒の飲みすぎで見えないものが見えているわけではない。

秋田ノーザンハピネッツの昨季のファンクラブユニフォーム ©森杉駿太郎

 これほどの理由があるのに、なぜ新たなプロ野球チームの本拠地に秋田県を推す声がないのだろうか。全国学力テストで常にトップクラスの秋田県民の頭脳をしても、全くもって理解しがたいことである。

 まだまだ理由はいくらでも挙げられるが、長くなりそうなので一旦ここで筆を置くこととする。

「秋田の話はもう飽きた」と言われる前に。

 今年の秋田の冬は、例年よりも寒い。

〈参考資料・文献〉

・秋田県立大館鳳鳴高等学校創立九十周年事業実行委員会「大館鳳鳴九十年史」(S63)
・自由民主党日本経済再生本部「日本再生ビジョン」(H26、自由民主党HPに掲載)
・公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ「B.LEAGUE Monthly Marketing Report 2020年2月」(R2、Bリーグ公式HPに掲載)

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