「撮影のモデル」を口実に自宅やホテルに連れ込み
「写真撮影のモデルを依頼したい」
北條被告はSNSを使って、報酬を払うからと男性を自宅やホテルに誘い入れている。ひとしきり撮影を終えると、睡眠薬入りのアルコールを飲ませるなどして男性を酩酊状態にさせ、その後に性交やわいせつ行為を繰り返し、その様子を動画に撮影していた。
「スーツ姿の男性が好きで、撮影のモデルにはスーツの格好をさせていたようです。1万円程度の謝礼を渡して、共犯の男とわいせつ行為をし、その様子を携帯電話で撮影していた。2人は同性愛者の出会い系サイトで知り合い、犯行を重ねていました。泥酔したサラリーマンを連れ込んだケースもありました」(同前)
驚くべきは、北條容疑者が、男性らを撮影に誘い出す際に信頼を得るため、公立中学校教諭の肩書を利用していたことだ。誘い出した「撮影のモデル」に対して「教材で使用する」などと語っていたのだ。公判では「申し訳ないと思いながら、性欲を満たしていた」などと話し、罪を認めている。
有罪認定された被害者は10人。なぜこれほど少ないのか?
2月18日の判決で、大阪地裁の松田道別裁判長は「被害者の人格と尊厳を踏みにじった。被害者らの嫌悪感、屈辱感は極めて大きい。多くの被害者が厳しい処罰を望んでいるのは至極当然だ」と断罪。判決で有罪と認定された被害者は20~40代の男性10人だが、これだけ少なかったのは「男性が性被害を相談するハードルの高さが問題だ」と全国紙社会部記者は指摘する。
「性犯罪は被害者が声をあげられないことにつけ込む姑息な犯罪で、社会的な認知が進んでいない男性の被害者はなおさら声をあげられず、警察も被害届を出してくれる被害者を集めるのに相当苦労したようです。結局、被害者として名前が挙がったのは10人でしたから。ただ、彼らの処罰感情は強い。2人が計300万円で示談している一方、示談した1人も含め9人は厳罰を求めています」
北條被告は法廷では罪を認め、反省している様子も見せた。しかし裁判長の言う通り、大いに尊厳を踏みにじられた被害者が声をあげるのは並大抵のことではない。いま、明るみに出ている性犯罪は氷山の一角と言われているのだ。