東京・赤坂見附の一角で、昼間に開店する「昼スナックひきだし」。ここには会社員から社長、子連れの主婦までありとあらゆる人が集まってくる。客のお目当てはカウンターの中に立つ“紫乃ママ”だ。

 紫乃ママは慶應大学卒業後にリクルートに入社。7年間勤めた後に体を壊して退職した。その後40代まで転職を繰り返し、プライベートでは3回の結婚をするなど、波乱万丈の人生を送ってきた。現在は豊富な経験を生かして、中高年のキャリアコンサルティング会社を経営するかたわら、昼スナママとして様々な悩み相談に乗っている。

 そんな昼スナックで繰り広げられる人生相談が『昼スナックママが教える 45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)で書籍化。悩める中高年への紫乃ママの愛あるアドバイスの数々から、一部を抜粋して転載する。

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 今日、昼スナを訪れたのは……?(全2回の2回目。#1を読む)

カウンターの中でお悩みに耳を傾ける紫乃ママ 

※個人が特定されないよう、事実関係を一部変更している部分があります。あらかじめご了承ください

来店客 言われたことだけを真面目にやってきた45歳

浅倉晴美さん(仮名、45歳、既婚)

住宅販売企業一筋22年。産休・育休を挟んで人事、財務、経理を10年以上担当しています。これまで、目の前にある仕事を真面目にこなして会社に貢献してきたという自負はあります。だけど、半年前にとてつもなく仕事ができて性格もいい26歳の後輩が転職してきて、戸惑っています。転職してすぐになんでも自分以上にこなす彼女を見て「これまで私がやってきたこと、積み上げてきたものってなんだったんだろう……」と自問自答するようになりました。

紫乃ママ いらっしゃい。あれ、今日は休み?  なんかもやもやオーラが出ているけど、どうした?

晴美 最近、ものすごく仕事ができて気配りも完璧、おまけに美人と、非の打ち所がない26歳が転職してきたんです。その後輩のキラキラオーラに圧倒されて、自分を卑下してしまい、なんだかもやもやしちゃって……。

紫乃ママ いわゆる「女子力が高い」だけではなく、仕事への意識が高くて賢い、視野も広い若い女性は増えていると思う。私たちアラフィフが入社した時は、1人1台パソコンがなくてDOSコマンドとか使っていた時代。キャリアアップの意識なんて持っている人のほうが少なかったし、時代背景が違い過ぎるよね。私たち中年が20年かけて手探りでやってきたことを、ひょいっとやってしまう。若い子たちのその適応力の高さに面食らう感じはあるよね。

※写真はイメージです ©iStock.com

 

晴美 正直、自分が26歳の時はあんなこともこんなこともできなかったのに……と後輩を見て、自分にがっかりしているんです。

紫乃ママ その後輩、きっとネイルもいつもキレイでしょ?

晴美 そうなの!

紫乃ママ そんでもって、きっとボランティアとか社外活動もたくさんしているでしょ?

晴美 そうなの、大正解!  初めて私の部署に入ってきた瞬間から輝きオーラを放っていました。あの存在感はいったい何? 「それに比べて自分は何者でもない」と思ってしまうんです。

紫乃ママ 晴美さんだって22年も1つの会社に勤めているんだから、何者でもないってことはないでしょ。