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「なぜ母が(家を)出たかって話はしなかったですね。僕も聞かなかったですし……」

「妹さんとはどんな関係だったの?」

「妹とは小学校くらいまでは普通に話してましたよ。でも、思春期で話さなくなって、それっきりですね」

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 白石があまり詳細を話したがっていないように感じた私は、その話を掘り下げることなく、ふたたび32歳の女性について話題を戻した。

「32歳の女性とはどんなお付き合いをしたの?」

「その女性のオゴリでご飯を食べたり、あと、ホテルに行ったりとか、普通に付き合ってましたね……」

一人目の被害者との多忙な二股交際

 そんなさなか、白石は一人目の被害者となるAさん(当時21)と、SNSで知り合ったのだそうだ。彼は語る。

「その途中で、一人目に殺した女の子と会ったんです。Aさんは、たまたまいろいろ好都合な条件が被ったんです。僕はそのとき収入はゼロだし、とにかく現金が欲しかったんですね。で、彼女は貯金があると話してて、かつ、口説けそうだったんで……」

 白石によれば、交際相手である32歳女性(Xさんとする)との、今後を考えていたタイミングでAさんと出会ったという。

「これからどうしようかなと思っていたときにAさんと会い、彼女を口説いて、『じゃあ一緒に住もうよ』と言ったら、『いいよ』と答えて、それでふたりで不動産屋に行ったんです。そこで僕が部屋を借りようとしたら、収入がなければダメだと断られて……」

 ただし、その不動産業者の担当者から、預金口座に一定の残高があれば、仲介は可能だと言われたのだと話す。

「日雇いのアルバイトをしてると話してたAさんに『一旦、おカネを入れてくれない』って頼んだら、『いいよ』って。それで彼女は50万円(*実際は51万円)を振り込んでくれたんです」

「正直、自分にとっては都合のいい相手でした」

 白石とAさんは物件を見て歩き、後に犯行現場となるアパートを決めている。

犯行が行われたアパート ©文藝春秋

「嬉しい話で、Aさんが僕に惚れてくれたんですよ。一緒に居たいとベタベタしてたんです。それで僕も、一緒に住んだら彼女には借りた部屋に居てもらい、自分が養うと話してました。もちろん部屋を借りさせるための口実で、その気はありませんでしたけど……」

 白石は淡々と語る。「正直、自分にとっては都合のいい相手でした」と口にする反面、「でも、すごくいい子でした」と振り返る。

「それで、無事に部屋を借りられたんですけど、彼女が、ほかに誰かと付き合ってることがわかったんです。定期的に誰かと電話で話してるみたいだったし、尋ねても『彼氏がいない』とは明言しないし……。それで、この子が入れ込んでるいまのうちはいいけど、気持ちが離れたら、『出てって』、『おカネ返して』、になると思いました」