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「コミュ力」が低いと不利になる就活

――就活などではどうでしたか。

ぽん 面接で症状が出てしまい、「コミュ力」が低いと判断されて不利になるというのは僕のケースも含め、多いと思います。特に「何分以内で自己アピールせよ」という場合、当然非吃音者とは伝えられる量が全く違う。僕の場合、酷い時は自分の名前を言うだけで時間切れになりました。

――いくら「吃音で差別しません」と言ってもその尺度で測る限り無意味ですよね。 

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ぽん ものを伝える手段は口頭だけではないのに「素早く的確に自分の考えを喋れるか」が偏重されがちだと感じます。

――問題の背景をどう見ますか。

ぽん 産業の重心がコミュ力を求められやすいサービス業に移ってきたこともこの社会構造を補強していると思います。僕が勤める会社でも上の立場になるほどコミュ力が強く求められるし、コミュ力を備えた人が昇進しますね。

米連邦議会議事堂で1月20日に行われたバイデン氏の第46代大統領就任式

――TVやネットには、話の内容ではなく、喋り方だけで全人格を否定する言葉も溢れています。どう感じますか。

ぽん 喋り方は誰からも見える材料なので、皆そこだけで手っ取り早く評価したいのかもしれません。喋り方というものがいかにその人を印象付けているか、という現実を突きつけられるような感覚にもなります。 

話し手と聞き手の関係性

――他方、あたかも吃音や障害に関する問題を存在しないかの如く扱う人もいます。

ぽん 僕も吃音者だと伝える時に「(あなたが吃音者でも)私は気にしないから」と言われることがあるのですが、少し違和感があるんですよね。困っている人がいる、という状況に対して、自分は関係ない、と線を引いてしまっている感じがする、というか。

 ひょっとしたら、目の前にいる人の吃音が障害になるような世の中を、自分も作ってしまっている側なのではないか、という気持ちをどこかで持っていてほしいんです。吃音って、話し手と聞き手の関係性の中で障害の側面が生じてくるものだと思うので。 

――逆に対話しやすいのはどんな人ですか。

ぽん 「吃音ってどういうもの?」と興味を持って掘り下げてくれる人ですね。こっちが抱えている困難を分担して、対等な位置に立とうとしてくれていると感じます。吃音を、皆が自分に関係する問題だと考えてくれたら最高ですね。