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「次はお母さんと一緒に来て」…新米パパが感じた“育児の世界に歓迎されていない”違和感の正体

渡邉 卓也 2021/03/19

労働と育児を両立させる物理的な困難さ

 私はフリーランスの文筆業であり、比較的時間に融通が効く仕事なのでまだマシだが、それでもやはりすべてをやろうとするとタスクが多すぎてあふれてしまう。しかし子供が成長するにつれて必要なお金も増えていくため、労働の手を抜くわけにもいかない。それどころか、子供が産まれたら「これまで以上に仕事を頑張ろう」となるのが自然であろう。

 男親も妻や子供のために育児を主体的に行って当然だが、しかし無茶をして潰れてしまっては意味がない。そうなると「仕事をメインにしつつ、育児はちょっと手伝って、イクメンぶっている」という状況に陥りやすく、嫌だとしてもそれが合理的に見えてしまうのだ。

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 この問題はやはり、労働と育児が両立しえないからこそ起こるのであろう。解決するにはどこからか膨大な金を手に入れるとか、あるいはパートナーにより多くの賃金を稼いでもらい立場や割り振りを変えるとか、もしくは会社や社会の理解を得て男性の育児休暇などの拡充をするなど、要するに“男性が労働から解放されなければならない”わけだ。

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男性育児休暇の実態は?

 私の義兄はベビー用品に関連した会社に勤めているため、育児休暇をしっかりと取得できていた。子供が大きくなってきてからは自身のキャリアアップのために新たな勉強をはじめるなど、子供がいてもかなり恵まれた環境にあるといえる。一方で知人の塾講師は子供の寝顔を見るのが精一杯なくらい激務で、育児を手伝うことすら難しいという。

 厚生労働省の発表によると令和元年度における育児休業の取得率は、女性が83.0%の一方、男性は7.48%に過ぎない。男性は平成30年度に6.16%なので取得率が上昇傾向にあるものの、それでもわずかな人しか取得できていないのは事実だ。

 育児休暇の義務化が行われ、会社員のみならずフリーランスなどの人々も対象に労働環境が是正されれば、男性が育児に参加する余裕ができる。しかし、そうなったからといってすぐ育児の世界に男性が増えるかというと、疑わしく感じられるのだ。

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