なんと早稲田大総長が2代続けて教駒出身なのである。第15代(総長在任、2002~2010年)は白井克彦(1958年卒)で、専門は知能情報学。第16代(同、2010年~現在)は鎌田薫(1966年卒)で、民法が専門である。鎌田は早稲田在学中、学生運動に精を出していたと、かつての同級生が話す。
たしかに、アカデミズムの世界で教駒、筑駒OBがかなり幅を利かせている。若手学者の登竜門ともいうべきサントリー学芸賞受賞者がけっこういる。メディアでの発信力が旺盛な四方田犬彦(1971年卒)、東浩紀(1990年卒)。 同学年で経済学者の大御所の植田和男、吉川洋(いずれも1970年卒)。政治学の牧原出(1986年卒)。 塩出浩之(1993年卒)は、2016年に『越境者の政治史』でサントリー学芸賞、毎日出版文化賞、角川源義賞のトリプル受賞となった。
神童を抽選で排除してはいけない
政官財学にしっかり根を下ろしている筑駒OBのなかで、もっとも異彩を放つのが、アダルト男優、森林原人(1998年卒)だろう。神童と呼ばれるほど頭がよかった。中学受験では筑駒のほか、麻布、栄光学園、ラ・サールに合格している。
森林は筑駒に入学後、カルチャーショックを受ける。とてつもなく頭のいい奴がいっぱいいてどうやっても太刀打ちできない。勉強もたいしてせず、いとも簡単に合格したのが何人もおり、一を聞いただけで十も百もわかってしまうような頭脳で、神童としかいいようがなかった。
勉強では神童にかなわない。エロの世界できわめることを決意する。性的知識の豊富さで、学年トップになってやろうと思い立った。
「どこでもチンポを出し、勃起させ、エロ本を数多く所有していたので、エロのジャンルにおいては学年トップでした。(略)エロのいいところは、どれだけ頭のいい奴にも等しく難解なところです。理性や思考で解決できることじゃないから、経験や行動力がモノを言います。となると、エロが僕の肩書きになっていくのは自然の流れでした。僕がAV男優になったことは、筑駒史上では信じられないことですが、僕と親しい友達は納得しています。それほど、僕はエロと共に学生生活を送りました。筑駒での僕のヒエラルキーを決定付けたエロは、同時に、僕のコンプレックスも救ってくれていました」(『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』講談社、2016年)。
昨今、国立大学附属学校入学を抽選制にするという議論がなされている。筑駒OBの多くは反対だ、森林さんもしかり。神童のなかにこそキラリとした個性が浮かび上がる。筑駒が神童の楽園であり続けるために、神童を抽選で排除してはいけない。
日銀総裁、エロが大好きなAV男優、サントリー学芸賞学者、共産党書記局長、カジノで106億円負けた経営者、早大総長―――そんな人材を送り出した学校を、国は大切にしてほしい。
(敬称略)