「森下千里? 元グラドル? 誰だ? 森高千里ならわかるが……」

 3月8日、まもなく東日本大震災から10年目を迎えようとしていた宮城県・石巻市(衆議院宮城5区)に住む50代のAさんは困惑していた。その日の朝、読売新聞が「自民、元タレント森下千里氏を衆院宮城5区で擁立へ…震災復興に『強い思い入れ』」という記事を掲載。

 自民党宮城県連が、空席となっている宮城県第5選挙区支部の支部長に森下千里氏(39)を選出する方針を固めたため、次期衆院選で同区の公認候補となることが濃厚だと報じたからだ。

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2009年、DVD『禁断症状』発売記念イベントでの森下千里 ©時事通信社

 Aさんが困惑したのは、森下が愛知県名古屋市出身で、一見したところ石巻に全く縁も所縁もないように思われたからだ。しかも宮城5区は立憲民主党の安住淳衆議院議員(59)が強固な地盤を築き、かつての小沢一郎の「小沢王国」ならぬ、「安住王国」とも評される選挙区だ。無名の落下傘候補が敵う相手ではない。

安住淳氏 公式HPより

トリッキーな候補者しか立てられなかった

 全国紙記者が解説する。

「宮城5区では立候補予定だった元衆院議員の勝沼栄明氏(46)が任期満了に伴う石巻市長選(4月25日投開票)に出馬するため、県連は候補者を探していた。しかし、同選挙区は立憲民主党の安住淳国会対策委員長が過去8連勝している牙城です。本来なら地元の県議や市議から候補者を選出するが、負ける可能性が高いので誰も出たがらない。自民党としてはトリッキーな候補者しか立てられなかったのが現状です。

 関係者を通じて森下側がアプローチしていたのではないかと言われ、自民党としてもタレント候補は連日、スポーツ紙やワイドショーが追いかけるのでニュースになる。政治に関心がある若くてキレイな候補者を探していたので両者の思惑が合致したのでしょう」

森下千里 本人インスタグラムより

きっかけは「カレーなどの炊き出し」

 自民党宮城県連の担当者は、森下を候補者として選任する理由について次のように説明する。

「宮城5区内の各支部、県議団から自薦他薦を募り、他薦で森下さんの名前が出てきました。衆院議員は10月には任期満了を迎えますから、急いで宮城5区の支部長を選任しなくてはならなく、そこで森下さんが急浮上したということです。きっかけは、森下さんが震災後に被災地支援でカレーなどの炊き出しを行ったことだったと聞いています。まず選考委員会を設置して、3月14日にご本人を宮城に招いたうえで、所信表明をしてもらう。さらに執行部と意見交換をしたのちに、最終決定することになっています」