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“ポップス歌手”が「いま、やれること」とは? 桑田佳祐は「3.11」と「コロナ禍」に想いを馳せて「Blue Note Tokyo」で歌った

2021/03/15
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いまを生きるすべての人へ、エールを歌で

 ライブの白眉は後半、連なって配された2曲だった。

 まず、ライブのかたちでは本邦初公開となる『SMILE~晴れ渡る空のように~』。

 もともとは、民放5系列114局による2020年の共同企画「一緒にやろう2020」のため制作された曲だった。

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 本来の使われ方が為されぬまま2020年は過ぎ去ったものの、コロナ禍で「この歌に励まされる」との声はよく耳にする。ライブなどで披露されないうちから楽曲は、万人への応援ソングとして広まっていたわけだ。

 今回はアップテンポ、かつバンド・サウンドでのアレンジがなされ、いかにも皆で声を合わせて歌いたくなる曲に仕上がっており、桑田とスタッフとで作りあげられる光景に、胸が熱くなった。

 続いて演奏されたのは、『明日へのマーチ』。

 ライブが配信された数日後には、また3月11日がやってくる。今年は東日本大震災から10年の節目でもある。この曲は10年前の震災直後に、「せめて歌でエールを」との気持ちからつくられた曲だった。

 東北へ寄せる想いはもちろん、10年経ったいまもこれからも変わらぬままである。桑田は、軽快にかつ温かい表情でマーチを歌いあげたのだった。

 ライブの「締め」は『スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)』『真夜中のダンディー』と、ちょっぴりアダルトで文字通りダンディーな曲でキメた。アンコールも『悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)』で軽快な歌声を響かせ、最後に『明日晴れるかな』を情感たっぷりに歌い上げ、ライブを締め括った。

 全24曲の、「最高の音楽仲間たちと、いい音を鳴らす」ことを目指したライブ。全編を聴き終えると、ひとつのいたってシンプルなメッセージも含んでいたことに気づく。

 いつか、いやもうすぐ“春”はやってくる。

 その日へ向けて歩む人たちを、桑田佳祐とその仲間たちは心より応援します、というもの。

 まさに『明日へのマーチ』の歌詞にある通り、「野も山も越えて行こう 明日へのフレー!! フレー!!」なのである。

“ポップス歌手”が「いま、やれること」とは? 桑田佳祐は「3.11」と「コロナ禍」に想いを馳せて「Blue Note Tokyo」で歌った

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