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2021/03/16

若林は「あの違和感」を忘れていない

 収録では、ホスト役の若林正恭が率直に自分の聞きたいことを聞いてくる。オードリーは2008年の『M-1グランプリ』で準優勝を果たして、いきなりテレビの世界に叩き込まれた。それまでテレビを見る習慣がなく、社会との接点も少なかった若林にとっては、見るもの聞くものすべてが新鮮で、驚きと戸惑い(と苦痛)を感じた。

 数々のレギュラー番組を抱え、MCを務めるような立場になってからも、若林はあの頃の「違和感」を忘れていない。むしろ、いまだにその違和感と共存しながら芸能界を漂っているようなところがある。

 そんな若林は、ゲストに対して自分の興味関心を素直にぶつける。先輩に対しては、尊敬の眼差しでその知恵と経験に学ぶ姿勢を見せる。後輩に対しては、昔の自分を重ね合わせて理解と共感を示す。

「いちいち頭で理解しないと飲み込めない」という、若林という人間の「めんどくさい」と言われるような部分が、この番組ではゲストの話を深掘りするために役立っている。

若林正恭 ©時事通信社

芸人はいつから“芸”を語り始めた?

 人の話をちゃんと聞く、というのはそれほど簡単なことではない。タレントなら誰でも、テレビに出るときにはいいところを見せたいし、目先の笑いが欲しい。手の内を明かすようなことはなるべくしたくはない。

 でも、若林は素朴な好奇心だけでゲストに向き合うことで、自然にガードを下げさせて本音を引き出す。さらに、脇を固める春日俊彰もゆったりした雰囲気作りに一役買っている。春日の天真爛漫な笑顔がゲストの気分を乗せていると思われる場面は多い。

 昔の芸人は芸のことを人前では語らなかった。マジシャンが観客の前で手品の種明かしをするのと同じくらい、ありえないことだと思われていた。しかし、最近、芸人が真剣に芸のことを語る番組が増えてきた。そのルーツとなったのは恐らく『アメトーーク!』(テレビ朝日)だろう。

『アメトーーク!』では毎週さまざまなテーマが取り上げられているが、その1つに芸談がある。「ひな壇芸人」という企画で、ひな壇に座る芸人たちが目立つためのテクニックを赤裸々に語ったあたりから、その手の企画が増え始めた。