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 そのようにして人物像を探り、ボールを投げていくことが、相手にとってもこころを開くステップになるのだという。

「自分のことを当てられた」

「わかってもらえた」

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 と思うと、急に距離感が近くなったり、信頼感が増したりするのは、占いと同じだ。

「人間って、みんな『自分のことをわかってもらえてない』って感じているものなんですよね」

 だからこそ、「ここに来ればホントの自分をわかってもらえる」と思えたひとは、こころを開き、自分のことを話してくれるようになるのだ。

「いつもそこにいる」という安心感

 ニュクス薬局がわたしたちに与えてくれる安心感のひとつとして、まず、シンプルに「いつもそこにいる」という側面がある。

※写真はイメージ ©iStock.com

 中沢さんは、ニュクス薬局が夜8時にオープンして朝9時にクローズするまでの13時間、たったひとりでカウンターに立ちつづけている。従業員も、アルバイトもいない。

「いつ行っても、中沢さんがいる」のだ。そうなると、

「あ、知らないひとだ。新しいアルバイトさんかな?」

「中沢さん、今日はいないのか……じゃあいいや、帰ろう」

 と引き返すことがない。「行こっかな」と思ったら、いつ訪れても、白衣を着た中沢さんが、同じ顔で同じテンションで立っている。

 つらいことがあった日も、楽しいことがあった日も。お金がない日も、給料日も。「店長さん」でも「薬剤師さん」でもない、「中沢さん」がそこにいるのだ。

孤独な若者の支え

 全員の名前を完璧に覚えている、なんてことはない。けれども、一度来たひとであれば、顔を見たら前回どんな話をしたかはだいたい思い出せるという。

「とくに、処方箋を持ってきたひとで、なんとなく心配だなって思ったときとか、ボールを投げて『こういう子かな?』って考えたときとかは、コンピューターで管理している薬歴に、メモを残したりもしているので」

「あそこに行けば、『患者』でも『お客さん』でもない『わたし』をわかってくれているあのひとがいる」

 この感覚は、ひとを安心させる。ほっと安心してまた、いつでも戻ってこられる。

 とくにニュクス薬局のある歌舞伎町は、上京者の多い街。

「ああ、この間の……」という表情に、どれだけの孤独な若者が支えられているかわからない。