別人を演じるわけでも多重人格者を演じるわけでもなく、アリスさんが演じたのはベースが全く同じ人物。しかし求められる演技は真逆。視聴者にはきちんと同じ人物だと思わせながら、2つの世界線の「澪」を絶妙な振り幅で演じ分ける必要がありました。
そして、アリスさんが演じた澪は見事に視聴者からの共感を集め、視聴率ではイマイチ振るわなかったものの、SNSなどのネット界隈では盛り上がる作品となりました。
石田姉妹のような現象が起こる…?
数年前までは“広瀬すずの姉”と語られることもあったアリスさんですが、女優として右肩上がりで評価を高めている彼女を、今もそのイメージだけで見ている人はもういないのではないでしょうか。
ここで思い出されるのが石田ゆり子・ひかりのアラフィフ美人女優姉妹。
言わずもがな広瀬アリス・すず姉妹との共通点は、姉妹揃って売れっ子女優であるということ。ただ、それ以外にも共通点があります。
それは、妹が先に大ブレイクしたということです。
妹の石田ひかりさんは、大林宣彦監督作品の映画『ふたり』(1991年)、『はるか、ノスタルジィ』(1993年)、そして朝ドラ『ひらり』(1992年後期/NHK)などで主演、月9ドラマ『あすなろ白書』(1993年/フジテレビ系)ではヒロインを演じ、一気にスターダムを駆けあがりました。
一方、姉の石田ゆり子さんも、1994年から始まったドラマ『美味しんぼ』シリーズ(フジテレビ系)、『静かなるドン』シリーズ(日本テレビ系)でヒロインを務めるなど、数々のドラマや映画に出演し人気女優となっていきました。ただ、当時はひかりさんほど突き抜けたブレイクはしていなかった印象です。
そんな石田ゆり子・ひかり姉妹ですが、ひかりさんが結婚後に仕事をセーブしていたこと、ゆり子さんが年齢を増すごとに女性として魅力を増していったことなどがあり、人気の逆転現象が起こったように思います。
ゆり子さんは2016年の連ドラ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で演じた主人公の伯母役が大好評だったことも記憶に新しいですが、近年も数々のドラマや映画に出演し第一線で活躍中。2018年に発売したフォト&エッセイ集『Lily ―日々のカケラ―』(文藝春秋)は、幅広い年代の女性にうけ、発行部数20万部を突破する大ヒットとなりました。
石田ゆり子さんも広瀬アリスさんも、地道に演技の腕を磨き続けてきた努力が結実したのでしょう。そしてお二人とも芯が強く、良い意味でマイペースという長所をお持ちなのかもしれません。