文春オンライン

自衛隊“パワハラの権化”ハカイダーが懲戒処分されていた

エリート部隊「第1空挺団」団長時代のパワハラめぐり

2021/03/19
note

「部下の月の残業時間が100時間をゆうに超える」

 戒田氏が陸上幕僚監部で運用支援・訓練部長になった後も、すでに「部下の月の残業時間が100時間をゆうに超えるようになった」(前出・陸自幹部)と悪影響が生じている。身内に対する処分の甘さが、ハラスメントがまん延する組織体質の原因となっている。今後の人事で戒田氏が現在の陸将補から陸将に昇格すれば、数千人、数万人の自衛官をまとめる師団長に出世することは確実視されており、国防の礎であるはずの自衛隊におけるパワハラ被害者は大幅に増加することが懸念される。

 編集部を通じて戒田氏の処分について防衛省に確認すると、以下のような回答があった。

〈懲戒処分の公表については、行政の透明性の確保や再発防止の観点から行っており、原則として処分された隊員の個人の特定につながる情報については、既に処分を受けている個人に更なる不利益を及ぼすおそれがあることから、公表しておりません。このため、特定の隊員が懲戒処分を受けたか否かについては、回答を差し控えます〉

ADVERTISEMENT

第1空挺団の降下訓練始めにおける戦闘訓練(陸上自衛隊フォトギャラリーより)

徹底的に悪しき体質を追及していただきたい

 さらに、防衛省が戒田氏を処分したという事実は、陸自内部の問題にとどまらない。昨年8月に戒田氏のパワハラについて報じた際、当時防衛大臣だった河野太郎行政改革担当相が記事について「事実誤認」「ずさんな報道」と記者会見で述べていた。今回、戒田氏が懲戒処分されたことについて改めて見識を問いたい。記事を公開してから4カ月も経過し、河野氏が昨年9月に大臣を交代してから処分が公表されたのは、パワハラ撲滅を表明していた河野氏の防衛相在任中にこのような不祥事が発覚した事実を認めたくなかったからではないかと邪推もしたくなる。

 先に紹介した告発状には、防衛省の政務三役(防衛大臣、防衛副大臣、防衛政務官)にも同じ文面を送付したと書かれている。岸信夫防衛相には、再発防止の足を引っ張る懲戒処分の公表基準の見直しを含めて、徹底的に悪しき体質を追及していただきたいものである。

自衛隊“パワハラの権化”ハカイダーが懲戒処分されていた

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー