陸上自衛隊の「パワハラの権化」こと、戒田重雄運用支援・訓練部長が昨年末に密かに減給で処分されていた。複数の関係者が証言している。戒田氏をめぐっては、筆者が文春オンラインで前職の陸自のエリート部隊「第1空挺団」の団長だった時代のパワハラを2回にわたって詳報している。その人物のパワハラについて、防衛省が責任を認めたことになる。ただし、発表資料では氏名、階級など個人を特定できないようになっている。
「陸上幕僚監部の50代男性幹部」と公表
昨年12月25日、陸上自衛隊は以下の懲戒処分について発表した。
1 被処分者の所属等 陸上幕僚監部 幹部自衛官 50歳代 男性
2 事案の概要(処分の理由) 被処分者は、前職在任間の令和元年12月頃、駐屯地内において、部下に対する指導に際して声を荒げるとともに、執務室のドアを蹴る等、威圧的な指導をした。
3 処分年月日 令和2年12月25日(金)
4 処分量定 減給1月1/30
すると今年に入って、筆者のもとに処分の対象者が戒田氏ではないかとの情報提供があった。
戒田氏は、文春オンラインで2度報じただけでも、(1)第1空挺団員全員の貯金やローンなど、家計について書類提出させ、100万円未満だと恫喝、(2)部下に朝7時出勤、深夜帰宅の長時間労働を無意味に強いる、というパワハラ行為を行っており、多くの部下が辞めたり体調を崩していることから「ハカイダー」と呼ばれている。
防衛省では、懲戒処分実施時の公表基準を定めており、「被処分者の所属等、事案の概要、処分年月日及び処分量定に関する情報を、個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表する」としているため、これだけでは処分を受けた「幹部自衛官」が戒田氏であるとは特定できない。
筆者は裏付けを急いだが、防衛省内ではかん口令が徹底しており困難を極めた。異常なほど情報統制されていたが、防衛省内でも逆に不審に思われていたという。