コロナ禍で家族葬や直葬を選ぶ人が急増
そもそも、なぜ、葬儀業者は民泊に遺体の預かりを依頼していたのか。業界関係者は、現代特有のやむを得ない事情があったのではないかと指摘する。
「大手の葬儀業者は自前の遺体安置所を持っていますが、小規模の葬儀業者は持っていないことが多いんです。しかも最近は親戚や会社の同僚など大人数の参列者を集める昔ながらのお葬式よりも簡素な家族葬や直葬を選ぶ人が増え、小規模葬儀業者へ依頼が急増している。自前の安置所を持たない葬儀業者は、何とかして遺体の保管場所を確保しなければならない。規制がない民泊に遺体の預かりを依頼するのも、やむを得ない一面があるのかもしれません」(葬儀業関係者)
本格的に多死社会が到来すると...
また、前出の社会部記者は「この状況は『多死社会』の到来を予感させるトラブルだ」とも語っている。
「2016年、厚労省が『新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 第1回』で作成した資料に、『多死社会の到来』という項目がありました。多死社会というのは、高齢化社会が進行した後にやってくると言われていて、人口の大部分を占める高齢者が寿命で亡くなり、人口減が急速に進む社会の形態のことです。日本では2040年頃に年間死亡者数が最大になると言われています。
本格的に多死社会が到来すると火葬場が不足する。つまり亡くなってから火葬するまでの“順番待ち”の期間が生まれるということです。“遺体一時預かり民泊”は今後も増えていくかもしれません」
前出の地元関係者はこうも語っていた。
「こんな時代やし、法律に違反しているわけでもないから、民泊業者もちょっと不憫ではあるわな」
今後、日本は迫りくる多死社会とどう向き合っていくのだろうか。