2ヵ月半にわたった1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の緊急事態宣言が、3月21日まででようやく終わります。長かった冬が終わり、やっと春の訪れを感じたという人も多いのではないでしょうか。
宣言が発出された2021年1月7日、東京都の新型コロナウイルスの陽性者数は2520人を数え、過去最高となりました。しかし、その翌日から陽性者数は減っていき、3月13日時点で330人とおよそ8分の1となりました。
テレビを見ていると、陽性者が減ったのは緊急事態宣言の効果だということを、疑うこともなく話が進められています。しかし、本当にそうなのでしょうか。口には出さなくても、「こんなに人出が多いのに、緊急事態宣言に意味があるのか」と感じている人も多いに違いありません。その感覚は間違っていないと私は思います。なぜなら、新型コロナに関する統計を見てみると、陽性者の減少と宣言には、関係がなかったのではないかと考えられる事実がいくつか見つかるからです。
宣言の1、2週間前から感染は減っていた
第1に、陽性者数が宣言直後からピークアウトしていったことです。新型コロナウイルスは感染から発症まで5日ほどかかり、さらに検査で陽性と出るまで数日必要です。もし宣言の効果であれば1、2週間経ってから減少し始めるはずですが、宣言直後にピークアウトしたということはそれと関係なく、宣言の1、2週間前から感染が減り始めていたことを意味します。
第2に、緊急事態宣言の区域とそれ以外で第三波の陽性者数の推移を比べてみると、いずれも同時期にピークアウトし、同じような山を描きながら減少していることです(図1)。宣言区域外でも飲食店の時短要請を出している自治体が多いので、その効果も多少はあるかもしれませんが、グラフを見れば宣言の有無で傾向に違いがないのは歴然です。
「人出が多い=陽性者が増える」は本当?
第3に、陽性者数の増減と人出の多さとが相関しているように見えないことです。図2のグラフは、昨年(2020年)4月から今年2月末にかけての都内の陽性者数(折れ線)と、渋谷センター街の人出のデータ(棒グラフ)を一つにまとめたものです。
1回目の宣言解除後、人出は急増して高い水準のまま推移しましたが、陽性者数は11月半ばまで500人を超えませんでした。また、2回目の宣言期間の人出は減ったとはいえ、1回目の期間に比べると2倍も多いうえに、2月頃からはむしろ増えています。にもかかわらず、陽性者数の減少傾向に大きな変化はありませんでした。