「このまま受診控えや太り過ぎ、運動不足が続くと、何年か後に、心血管疾患の発生率やがんの死亡率が高くなるのではないかと心配です」

 そう話すのは、慶應義塾大学医学部心臓血管外科教授の志水秀行医師だ。

 新型コロナウイルスの陽性者が急増したこの冬、高齢者では感染を恐れて外出を控えた人も多かったのではないだろうか。

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 新型コロナに感染しないことは大切だ。だが、臨床医に取材をすると自粛期間が長引いていることで、「糖尿病や血圧のコントロールが悪くなっている人が増えている」としばしば耳にするようになった。志水医師も話す。

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「感染が怖い」で手遅れになることも

「私の外来に通っている患者さんでも、ずっと家にこもっている人が少なくありません。巣ごもりすると、主な楽しみは食べることぐらいしかありません。外来にまじめに通い続けている方でも、『コロナ太りしました』という方が結構な割合でいます。

 太るということは、カロリーが過剰で、運動が不足していることを意味します。日頃から太っている患者さんや生活習慣病の患者さんには『お散歩したほうがいいですね』と話しているのですが、お年寄りは『外出してはダメ』と家族から言われたり、感染が怖くて散歩しなくなったりした人が多いのです。そのため、体重が4、5kg増えた人がたくさんいて、糖尿病、高血圧、脂質異常症をはじめとする生活習慣病が進みやすい状況になっています」

 さらに「病院に行くと感染が怖い」という理由で、受診控えする人も多いと志水医師は話す。だが、具合が悪いのに受診を控えてしまうと、手遅れになる恐れもある。