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 実際、昨年4月の緊急事態宣言以降、受診が遅れる心筋梗塞の患者が増え、心壁が破れるなど外科手術が必要な重い合併症に至ったケースが約4倍に増加したという論文を、この2月に国立循環器病研究センターが発表している。

がん検診の受診者が減った影響は?

 それだけでない。高齢者では過度な自粛によって歩く機会が減ったり、人と会って話をする機会が減ると、サルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(心身の衰弱)が進んだり、認知症の患者が増える恐れも指摘されている。うつ(Depression)、認知症(Dementia)、せん妄(Delirium)の「3D」は関連しており、重なって発症することが少なくない。

志水秀行医師(慶應義塾大学医学部心臓血管外科教授)

 また、受診控えは「がん」にも影響を及ぼす恐れがある。昨年、4月と5月のがん検診受診者は前年同月比で10~20%に落ち込んだ。それによって、受診が通常より半年ほど遅れた人が多かったという。こうしたがんの受診遅れが、がんの生存率にどれほどの影響を及ぼすかはまだわからない。だが、専門医の間では、5年後、10年後に生存率が低下する可能性もあると心配されている。

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 マスコミでは、コロナ感染者の「後遺症」は注目されることが多いが、コロナ自粛の「副作用」はあまり取り上げられない。しかし、過度な自粛が心身の健康、とくに高齢者の「健康寿命」に大きく影響しかねないことも、私たちは考える必要があるだろう。

出典:「文藝春秋」3月号

 どのようにすれば、コロナ自粛の「副作用」を予防できるのか。月刊「文藝春秋」2021年3月号および「文藝春秋 電子版」に3人の医師のインタビュー記事が掲載されている。(たかせクリニック理事長・髙瀬義昌「『認知症』が接触減で悪化する」/慶應義塾大学医学部心臓血管外科教授・志水秀行「巣ごもりで『心疾患』激増リスク」/がん研有明病院副院長・大野真司「がん『受診控え』はやめよう」)。コロナ時代の「健康の新常識」を知って、わが身を守ってほしい。

文藝春秋

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コロナ時代「健康の新常識」