気付くと「お笑いモンスター」に成長していた
そして、娘が小学校3年生のある日のことである。
娘と幼稚園の年中の息子と私の3人でお風呂に入っていた。私は体を洗いながら、思わず屁をこいた。すると真横にいた5歳の息子が「あーっ、おとうさん、いまオナラしたでしょ?」とニヤニヤしながら、問いかけてきた。
私「いや、お父さんじゃないよ、お前がしたんじゃないの?」
息子「ぼくじゃないよ、ぜったいおとうさんだよ」
私「いや、お父さんじゃないから。じゃあお姉ちゃんじゃないの?」
その時娘は、髪の毛をシャワーで洗い流しているところで、私と息子のやり取りはまったく聞いていなかったようであった。
娘「ん?なんか言った?」
私「いや、お父さんオナラしたでしょ、って言うから、お父さんじゃないよ、お前だろ、って言ったら、僕じゃないって言うから、じゃあお姉ちゃんじゃないの、って言ってたの」
娘「ちょっとやめてよー、失礼な。私じゃないわよー」
私「じゃあさ、誰がオナラしたと思うか、せーので指差そうよ」
息子「いいよ」
娘「いいよ」
3人「せーの!」
それぞれ、オナラの犯人だと思う人を指差した。息子は私を指差した。当然である。私が犯人なのだから。私は、そこまでの話の流れもよくわかっていないであろう娘を指差した。そして娘が誰を指差しているのか確認すると、娘はなんと娘自身を指差していた。それを見た息子が驚いた顔で問い詰めた。
「なんでおねえちゃんオナラしてないのに、じぶんのことさすの?」
その問いに対する8歳の娘の返答に、今度は私が驚愕した。
「あのね、こういう時は本当かどうかなんてどうでもいいの。その時面白いと思うほうをえらびなさい」
私は思った。モンスターを育ててしまった、と。
この話を後輩芸人にすると、「いやー、それは確かにモンスターですね。だって2年目の芸人でも、そこで自分を指差せるかどうかわかりませんよ」と、自分のライバルが登場したかのように神妙な顔つきで呟いていた。
その後も、娘のモンスターぶりは成長の一途を辿っており、小学校6年生の時、同じくクラスアンケートで、今度は面白い女子2位になった時、娘は、その結果が載っている学級新聞を恐る恐る私に差し出しながら言った。