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がんであっても働きつづけたい

 でも、企業サイドが主導する動きがあまりない。だから、私たちから始めます。それが「がんアライ部」というプロジェクトなのです。

 じつは私たちにはちょっとした成功体験があります。2015年に東京都渋谷区が同性同士のカップルのパートナーシップを公認する「パートナーシップ証明書」を交付することが大きくニュースになりましたが、同時期にライフネット生命では、同性のパートナーを「死亡保険金の受取人」に指定できるようにしました。すると同業他社さんも、同性のカップルを異性のカップル同等に扱うことを次々に公にされ、業界のスタンダードに変わったのです。

 このことについて、渋谷区の長谷部区長から感謝の言葉を頂きました。「行政だけではできることは限界があって、民間企業に動いてもらわなければならない。今回、ライフネット生命さんが動いてくれたことで、とても助かりました」

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 今回の「がんと就労」についても、微力ながら民間企業として旗振り役になって多業種の企業さんを巻き込み、働くがん患者さんたちがより生きやすい社会に変えていくことができればと考えました。それが、10月6日にスタートさせた「がんアライ部」プロジェクトです。

ライフネット生命社長・岩瀬大輔氏 ©近藤俊哉/文藝春秋

 クレディセゾン取締役 武田雅子さん、NPO法人フローレンス代表 駒崎弘樹さん、キャンサー・ソリューションズ代表 桜井なおみさん、NPO法人マギーズ東京共同代表 鈴木美穂さん、一般社団法人キャンサーペアレンツ代表 西口洋平さん、ARUN合同会社代表 功能聡子さんらに発起人として参画いただき、人事担当者など職場でがん罹患者を受け入れる立場の方を主な対象に、先進的な人事制度や取り組みを共有していくことで、がんの治療をしながら働くことが特別なことではなく、自然に受け入れられる社会の実現に努めていく予定です。

 早速、ライフネット生命でも自社の人事制度改革に取り組んでいます。

 がん罹患後に復職した社員を対象に、「特別有給休暇」の付与と、会社からの通院等の費用に充てていただくための「特別手当」を支給することにしました。

 加えて、あるがん経験者からのご提案をきっかけに新制度も用意しました。ライフネット生命には、「ナイチンゲール休暇」という大切な人の看病や介護に使える看護休暇制度があるのですが、この休暇は必ずしも社員全員が使い切る有給休暇ではありません。そこで、この看護休暇の「未消化分」を「ナイチンゲールファンド」として会社が一定期間ストックし、がんに罹患して困っている他の社員へプレゼントできるようにしました。

 ライフネット生命は小さな会社ですが、これまでの経験から、社会に大きな流れを生みだすことはできると確信しています。がん保険を通じて、がんと共生する時代に求められる生命保険会社の役割を果たしていきたい。それが私たちの使命だと思っています。

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