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「初めて切断した患者さんの足を持った時は…」 手術室看護師“オペ看”の仕事が想像以上に壮絶だった件

人間まおさんインタビュー

2021/03/27
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いまだに夢に出てくる「切断された足」

――冒頭でも仰っていましたが、漫画の中では糖尿病の患者さんのアンプタ(四肢切断術)で、初めて切断された足を持った時の衝撃を描かれていました。

まお いまだに夢に出てきたりとかしますよ。臭いもすごかったですし、組織が壊死しているのでブニョっとした独特な感触で、脛から下の部分だけを持ったはずなのにずっしりと重かった。かなりの衝撃でした。Twitter とかでも同じオペ看をやっているという人からコメントをもらいましたけど、「このオペはずっと慣れない」と言っている人が結構いました。

漫画『オペ看』より

――他に印象に残っているオペはありますか?

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まお 妊婦さんのカイザー(帝王切開)は何回ついても緊張するし、感動しましたね。カイザーって、出るまでがすっごい早いんですよ。5分ぐらいで、もうパッと出てきて。だからこっちも「赤ちゃんだ!」とか感動している時間がないんですよね。「出たらすぐ止血!」みたいな感じなので。

 首にへその緒が巻きついていたりすると、泣き声が聞こえなかったりするのですごく心配になったりするんですけど、気にしている暇もない。とにかくこっちはバーッと器械出しをして、ふっと「大丈夫かな…」みたいな。そういう風にドキドキしながらオペについていました。

心臓外科のオペ前日に行った誕生日デートは…

――ちなみにまおさんが一番大変だったオペは何ですか?

まお 心臓外科のオペが一番、苦手で…。時間も長くて手順を覚えるのが大変だし、器械の種類も多い。ドクターもめちゃくちゃ怖い(笑)。血流を止めるので部屋もものすごく寒いし、重圧もすごいので、とことん疲弊してしまうんです。「お金払うから代わってほしい!」と思うぐらいで。だいたい心臓外科のオペの予定が1週間ぐらい前に決まるんです。そうなるともうそこから毎日、憂鬱でした。どれだけ準備しても足りない気がしちゃうんです。

©️文藝春秋

 1回、自分の誕生日の次の日に心臓外科のオペが入っていた時があって。当時、付き合っていた彼が誕生日デートに連れて行ってくれたんですけど、もう気持ちが全然入らない。「こんなこともういいから家に帰って予習させてよ…」みたいな感じでした。せっかくサプライズ演出までしてくれたのに、オペのことで頭がいっぱいで「夜景どころじゃない!」みたいな(笑)。手順書とか全部写真で撮っていって、ちょっと空いた時間にもずっと予習して…そのぐらい心臓の手術は苦手でしたね。ただ、その分手術が終わって患者さんを無事病棟へ送り出した時の達成感は大きかったです。