「小学校の頃、通学路の途中に動物の死骸があって。それが日に日に腐っていったんです。ずっと片付けられず、ハエとかがたかっていて…その臭いが頭の中にずっと残っていた。初めて糖尿病の患者さんのアンプタ(※四肢切断術)のオペに付いて、切断した足を持った時、その重さに驚いたり、患者さんのことを考えて切ない思いが浮かんだ一方で、その臭いもリアルにフラッシュバックして。『あ、あの時と一緒だ』って思ったんですよね」

 そんな風にかつての経験を語ってくれたのは、現在ヤングマガジン(講談社)で漫画『オペ看』を連載中の人間まおさんだ。

人間まおさん ©️文藝春秋

 同作のタイトルにもなっている「オペ看」とは、手術室看護師のこと。多くの人が「看護師」という言葉で想像する外来や病棟で患者のケアをする病棟看護師とは異なり、仕事のフィールドは医療の最前線でもあるオペ室の中だ。

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 では、実際にオペ室の中ではどんなことが起きているのだろうか? また、オペ看の仕事とはどんなものなのだろうか? コロナ禍の中で注目が集まる医療業界の知られざる分野について、自身もオペ看として働いていたまおさんに話を聞いた。

【漫画】『オペ看』第1話を読む

漫画『オペ看』より

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オペ室を希望した新人はひとりだけ!

――もともとまおさんがオペ看を目指した理由は何だったんでしょうか?

まお 専門学生の時にいろんな病棟を実習で回るんですけど、担当してくれた看護師さんに怖い人が多くて、自分が病棟で看護師をやっていけるのか不安になっていました。だけど、手術室の見学に半日だけ行ったとき、ついてくれた看護師さんがすごくいい人だったんです。自分は結構グロいものへの耐性もあったし、「普通の病棟よりもそっちの方が自分の性に合っているのかな」と思ってオペ室を希望しました。

 ©️文藝春秋

――いきなりオペ看を志望する人は少ないのでは?

まお その年は新人が50人入ったんですけど、オペ室を希望したのは私ひとりだけでした。まずは病棟で看護師の「一般的な仕事」を身に着けてからオペ室に行く、という流れが多いんだと思います。オペ室での作業に関しては、私が通っていた専門学校ではほとんど学ぶことがありませんでした。実際に手術をやりながら覚えていくしかないんです。みんなそういうことも分かっているので、いきなりオペ室みたいな情報の少ないところには行かず、学生時代の知識を活かせる病棟から始めるという人が多いですね。

 ただその分、私は現場で手厚く指導してもらえたと思います。その日、その日で毎日勉強して、調べて…。責任がすごく重いなって思いましたね。オペ室に入るというのは自分の動きが患者さんの命に直結するし、何か一言言わなかっただけで大事件になったりもする。すごくプレッシャーはありました。