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2021/03/29

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, 読書, ライフスタイル, テレビ・ラジオ

生たまごと“赤まむし”を手に白目を剥いて迫ってくる研ナオコの姿

 以降、シチュエーション、やりとり、笑いどころを変えていく形で〈夫婦コント〉は、志村(またはザ・ドリフターズ)の番組で演じられていくように。妻役も、小柳ルミ子、岡江久美子、堀ちえみら、さまざまな歌手、俳優、アイドルが扮して笑いを巻き起こしてきた。

 なかでも研ナオコは、子供心にも鮮烈な印象を残した。彼女が登場する〈夫婦コント〉で欠かせないのが、生卵と精力増強ドリンクの“赤まむし”。なにかにつけて、一度聞いたら耳から離れない異様なイントネーションで「なまたまご~、赤まむし~」とつぶやき、その2アイテムを手に白目を剥きながら迫ってくる。志村と一緒に、観ているこちらも笑って慄いたものだった。

 研ナオコとは健康グッズ「プチシルマ」のCMでも共演、2001年には〈けん♀♂けん〉名義でデュエット曲「銀座あたりでギン!ギン!ギン!」をリリースするまでに。ふたりの付き合いは50年、出会ったのは志村がザ・ドリフターズのボーヤだった頃。

CDシングル「銀座あたりでギン!ギン!ギン!」

「ある日、ドリフの楽屋へ挨拶に行くと、初めて見る顔が入ってきました。(中略)私が話しかけてみると、余計なことは言わないのに、話し方や内容がとっても面白い。思わず長さんに、『彼をメンバーに入れたらどう?』と言ったことがありました。のちにそれが実現したときは、うれしかったですね」(「婦人公論」2020年5月12日号)と研が語っているだけに、はなから笑いの波長がピッタリと合っていたのだろう。

いしのようこと「夫婦」に……「私のこと、愛してないのね」

 80年代後半の〈夫婦コント〉といえば、『志村けんのだいじょうぶだぁ』でいしのようこを妻役に迎えた〈5時の夫婦〉シリーズ。寝る前に夫・志村が「明日、5時起きなんだよ」とサラッと言い放ち、妻・いしのが「ご、ご、ご、5時!?」と聞き返し、そのままあれこれと掛け合いをしていくというもの。『全員集合』の〈夫婦コント〉同様に志村がなにかしらの理由で怒り出し、いしのが「私のこと、愛してないのね」と打ちひしがれるのが基本パターンだったが、妙味となっているのはアドリブ重視のノリ。

志村けんさんといしのようこ ©時事通信社

 ふたりが本気で笑いを噛み殺そうとしていたり、たまらずに大笑いしてしまう姿が、ふたりの相性の良さをひしひしと伝えると共に妙にリアルな夫婦感も醸し出していた。その一方で、いしのは台詞を一切排除した「シリアス無言劇」と呼ばれるコーナーで俳優としての才能も発揮。表情だけで哀感を見事に表現し、観る者を本気で泣かせていた。

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