2021年の公示地価が発表された。発表によると全国平均の地価は6年ぶりに下落に転じた。住宅地は対前年比で▲0.4%、商業地では▲0.8%といずれも前年の住宅地で0.8%、商業地で3.1%のプラスであった状況が反転した。
コロナの影響大は、東京・大阪・名古屋
特にコロナ禍の影響が出たとされるのは、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の商業地だ。東京圏は▲1.0%(前年+5.2%)、大阪圏▲1.8%(前年+6.9%)、名古屋圏▲1.7%(前年+4.1%)と冴えない数値が並ぶ。コロナ禍による緊急事態宣言の発令で、飲食店舗が並ぶエリアや、国内外の観光客を取り込んできたエリアでの下落が目立ったほか、オフィスへの通勤を基本として成り立ってきたオフィスビル需要について、テレワークの進展によってオフィス賃借面積の縮小、解約が相次いでいることも影響しているといえよう。
三大都市圏が下落に転じた一方で、地方圏、とりわけ地方四市と呼ばれる札幌、仙台、広島、福岡は、踏みとどまっている。上昇率こそ縮まったものの、地方四市の平均で、住宅地は+2.7%(前年+3.5%)、商業地は+5.9%(前年+11.3%)と依然として地価が上昇していることが示された。
今回の地価下落については、コロナ禍の影響が大きいということであるならば、大都市ほど影響がある。しかも東京や大阪のような、オフィスや商業施設が多数集積しているエリアは、人々が活動を自粛してStay Homeすることで経済活動が縮小、その結果が地価下落につながるという、わりあいあたりまえの結果とみることもできそうだ。
ただ、今回のデータをつぶさに検討すると、実は違った側面が見えてくる。大阪と福岡の都市としての実力差だ。
大阪「道頓堀一丁目」は全国一の下落率
データをもう少しフォーカスしてみてみよう。大阪市の公示地価では、住宅地では▲0.1%(前年+1.2%)、商業地では▲4.4%(前年+13.3%)と、特に商業地で大幅な下落となっている。さらにフォーカスして大阪市の商業の中心地である中央区がどうなっているかをみてみると、商業地で▲8.1%(前年+18.2%)を記録している。
もっとフォーカスする。先日、1920年創業の老舗ふぐ料理店「づぼらや」が閉店となって話題となった大阪市中央区道頓堀1丁目の公示地価をみると▲28.0%、なんと全国一の下落率を記録している。
下落が激しいのは道頓堀だけではない。道頓堀の隣町で、インバウンド目当てにここ数年でホテルが林立している宗右衛門町で▲26.5%、難波で▲25.7%と続く。公表されている全国の商業地下落率ワースト10のなんと8カ所を大阪市内の地点が占めていることがわかる。