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マイナス28%、地価下落率トップの大阪と堅調な福岡 2都市が明暗をわけたワケ

マイナス28%、地価下落率トップの大阪と堅調な福岡 2都市が明暗をわけたワケ

2021/04/06
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人口が増加し続ける街

 さて今回の地価公示における二つの都市でなぜこのように明暗が分かれてしまったのだろうか。それは福岡と大阪のそれぞれの今後の発展可能性にある。

 大阪市は1965年に人口が316万人あったのをピークに減少を続け、一時は260万人に落ち込んでいたが2005年頃から徐々に回復に向かい、現在は275万人にまで回復している。だが、大阪市人口ビジョン(2020年3月更新案)によれば、今後人口は再び減少に向かい、30年には269万人、40年には257万人にまで落ち込むことが予想されている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(2018年3月推計)では予測はさらに厳しく、30年262万人、40年には249万人と250万人を割り込むとされている。

 いっぽう福岡市については、人口は20年で160万人、20年前の2000年134万人に比べて2割近くも上昇。さらに将来推計人口でも40年には167万人と人口は増加し続けることが予想されている。また福岡市は大阪市と比べても全体の人口に占める生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)の割合や年少者人口(14歳以下の人口)の割合が高い、つまり若々しい街である。

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 現役世代が多く、今後も人口が増加し続ける街だということは、住宅に対する需要もあるということだ。実は、このコロナ禍で博多区や中央区ではインバウンド需要の消滅でホテル用地を買い漁る動きは減少したのだが、実需や投資用のマンション用地を物色する動きは活発で、こうした実需が地価を下落させずにいる要因なのである。

 また、福岡は地政学的にも今や大阪よりも優位なポジションにある。アジア経済が急速に成長していく中で、福岡はアジアからのゲートウェーとして交通の要衝を占めているからだ。それはアジア各都市への飛行時間という時間距離で考えてみるとわかりやすい。

 福岡からソウルへは1時間30分。これは福岡から東京へ飛ぶのと同じ時間距離だ。ちなみに大阪からソウルへは2時間5分かかる。同じく福岡から上海へは1時間45分。大阪からは2時間45分だ。アジアを見据えたビジネスにおける時間距離は、圧倒的に福岡が大阪に対して優位な立地にある。

 福岡は歴史的にも朝鮮半島や中国などのアジア地域を中心に海外に対して門戸が開かれた街であり続けてきた。それだけ外からの人や文化の受け入れにも抵抗が少ない。ポスト・コロナ時代においても福岡は、大阪よりもはるかにポテンシャルがある街なのだ。

 地価はその地域や街に対する期待値の現れでもある。今後も不動産に対する実需、投資あわせてこの街は活況であり続けることだろう。図らずも大阪と福岡の都市力に対する期待値の違いがコロナ禍で露呈したのが今年の地価公示であったのだ。

マイナス28%、地価下落率トップの大阪と堅調な福岡 2都市が明暗をわけたワケ

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