インバウンド需要で我が世の春を謳歌してきた大阪市は、需要の消滅で阿鼻叫喚状態にある。大阪や京都などで積極的に展開してきたホテル関連業者は倒産ラッシュ、ホテル物件の売却案件も日に日に増えているのが現状だ。
昨年6月にWBF(ホワイト・ベアーファミリー)社が351億の負債を抱えて倒産したことを皮切りに「グラッドワン」のブランドで大阪や京都にホテル展開をしていたグラッドシステムズの倒産、近鉄グループホールディングスによる大阪、京都などの所有8ホテルの米国ファンド、ブラックストーンへの売却など枚挙にいとまがない。
大阪市内の状況は、コロナ禍がある程度収束し、2025年の万国博覧会を待たなければ、なかなか地価も回復しないのではないだろうか。東京のような大きなオフィス需要も見込めず、どちらかといえばインバウンド一本槍で伸びてきた大阪の地価の回復への足取りは重いと言わざるを得ない。
観光客激減でも、値上がり率を示した福岡
いっぽうで、コロナ禍においても踏みとどまった地方四市の中で福岡市について、もう少しつぶさにデータを読み込んでみよう。
まず、福岡市でコロナ禍がなかった訳ではない。東京や大阪と同様に、一時は博多中洲や祇園の飲食店が営業自粛、閑古鳥が啼いていたことは記憶に新しい。インバウンドなどの観光客も激減。実はこの状況は基本的には大阪市と変わってはいない。
ところが福岡市の公示地価をみると、住宅地で+3.3%(前年+6.8%)、商業地で+6.6%(前年+16.5%)と堅調である。さらに市の中心部、博多区にフォーカスすると、住宅地で+7.8%(前年+11.1%)、商業地で+8.8%(前年+21.5%)。上昇率こそ縮まったものの十分な値上がり率を示している。
さらに商業地を地点別にフォーカスすると、中央区清川の+15.0%を筆頭に博多区の祇園や博多駅前でも+12%以上と、全国商業地上昇率ベスト10のうち、なんと8カ所(博多区5カ所、中央区3カ所)がランクインしているのである。大阪と福岡で全く逆の結果となったのである。