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物語終盤は現実世界の「人種差別問題」を鮮烈に描き出す

――本作終盤、俗に言う「マーレ編」に入ってから本作はガラリと様相が変わりますが、それについてどう思われました?

板倉 「マーレ編」で「これ、現実世界の人種差別問題の本質を描いているんじゃないか?」って考えさせられて、かなりショックを受けました。僕、結局人類には平等も平和も不可能だと思っている人間なんですけど、そういう少年漫画ではスポット当てることの少ない、ゾッとする現実を描きましたよね。

 その最たる例が、劇中で何度も語られる「悪魔の末裔」「世界は残酷なんだから」というキーワードで、これを通して日本のみならずどの国の人でも、過去の自分たちの民族や国が行ってきたこと・行われてきたこととかと、照らし合わせて考えさせられる作りになっているじゃないですか。歴史のことを相当勉強してないと普遍的に心に響くものとして描けないと思うんですよね。

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 あとは、とある力を継承すると寿命が13年しか残らない、っていうルールね。それなのに、劇中の人物たちは割と受け入れて生きているんですよ。普通の漫画だとひとしきり葛藤するのに、それもない。なんだろう、普通にお爺さんお婆さんまで自分は生きるんだろうなぁ、と勝手に考えて悩み・暮らしている現実世界の我々と、そもそも認識が違う世界をキャラが生きている感じというんですかね。こういうのを描きながらちゃんとヒットしてんだから恐れ入ります。

 

「まだ読んでいないという人は心底羨ましい」

――アニメ独自の演出でグッときた箇所はありますか?

板倉 3Dを感じさせる演出が好きでした。疾走する馬たちを上から旋回するドローンカメラで撮ったようなアングルのシーンとかね。ほかにも最近の『ガンダム』アニメに通ずるアングルがあって、両方のファンとしては嬉しかったです。

 あと、声優さんに関して言えば、よく漫画原作でアニメ化されると脳内ボイスとズレて、勝手に「こういう声かぁ」と残念がったりすることあるじゃないですか。でも、『進撃』はそれが全然なかった。特に、ミカサ役の石川由依さんね。声めっちゃ可愛いじゃないですか。なのにめちゃくちゃ“ミカサ”なんですよね!

 

――最後に、『進撃』をこれから読んでみようかなと思っている人、そして原作者の諫山創先生に向けてメッセージをお願いいたします。

板倉 まだ読んでいないという人は心底羨ましいです。だって、今読み始めたら、多分最終回まで一気に読めるわけですから。アニメだってファイナルシーズンのクライマックスまで、駆け抜けるように観られますよ。

 そして諌山先生。地獄のような生みの苦しみの生活だったとお察しします。とりあえずホントお疲れ様でした……あ、まだか(笑)。周りがまだまだ「次回作を」と休ませてくれないかもしれませんが、ひとまずゆっくり休んでください!

 ◆◆◆

 果たして『進撃の巨人』はどんな結末を迎えるのか。未読の人はこの機会にぜひ、板倉さんと一緒にその終わりを目撃してみてはどうだろうか。

(文=TND幽介〈A4studio〉、撮影=文藝春秋/杉山秀樹)

進撃の巨人(33) (講談社コミックス)

諫山 創

講談社

2021年1月8日 発売