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先輩たちは、みんな「あの説」を口にしていた

 では、「あの説」は一体何だったのでしょうか。私以外にも、新卒で入った会社を1年以内に辞めた同世代の友人を多数見てきました。しかし、転職ができなかった友人、前職よりも待遇が悪い会社にしか就職できなかった友人は1人もいませんでした。

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「最低でも3年は働き続けないと、どこにも転職できない」と言い出したのは誰でしょうか。誰が言い出し、誰が広めた噂なのでしょうか。答えは、「ブラック企業」だと思っています。

 若手社員を囲い込んで、3年の間に「責任」を負わせ、会社を辞めづらくする。「違う業界への興味」を奪って、転職されるリスクをできるだけ下げる。「3年間は辞めるな」は、人員不足に陥っているブラック企業が新卒の社員を逃さないようにするための、常套句なのではないでしょうか。

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 ブラック企業の先輩たちは、みんな「3年間は……」という言葉を口にしていました。先輩社員に「仕事が辛くてしょうがない」という相談をすると、決まって「新卒ですぐに辞めてしまった奴らは、今の会社よりも悪い待遇の会社にしか転職できなかったから、辞めないほうがいい」という答えが返ってきました。今の会社より悪い待遇の会社なんてそうそうないはずなのに、世間をよく知らない若者はそれを真に受けてしまう。そしてそれを聞かされてきた後輩たちが、今度は自分たちより年下の後輩に、また同じことを伝えていく。「会社をすぐに辞めると、必ず痛い目を見る」と、何の根拠もないアドバイスをすることが常態化する。こうやって、ブラック企業の中で悪循環が完成していたのです。

ブラック企業で過ごす3年間は未来への糧になるか

 そもそも、大学卒業後の、23〜25歳の若くて貴重な時間をブラック企業のために費やすなんて意味がないと思いませんか。今思えば「忍耐力」がどうの、「適応力」がどうのだなんて、思考停止しているとしか思えません。過酷な環境で3年間も搾取されることを「経験」として評価するような会社なら、そこに転職してもきっと幸せにはなれないでしょう。

 しかし、今だからこのように考えるようになったものの、まだ若くて、ブラック企業で疲弊していた自分はこんな風に思えませんでした。誰かが言っていた「絶対に辞めるな」という言葉にとらわれて、「何とか1日でも長く会社にいなければならない」と思っていたのです。

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 もしブラック企業に入社してしまって苦しんでいる人がいれば、一度考えてみてほしいと思います。その会社は、人生の貴重な3年間を賭けてまで働き続けるべき会社ですか。自分がその会社で働き続ける理由が、しっかり見えていますか。

 ブラック企業で過ごす3年間を、未来への糧にできるでしょうか。もちろん個人差はあると思いますが、「最低でも3年は働き続けないと、どこにも転職できない」だなんて悲観しないで、自分にとっての最適解を導き出してほしいです。

 ブラック企業が、あなたの幸せを保証してくれることはありません。彼らは、労働力を搾取することしか考えていないのです。あなたの未来のことなんて、どうでもいいと思っているのです。それでも、その会社で働き続ける理由がありますか。