「入社した会社がブラック企業かもしれない」

「いきなり体育会系の研修が始まって、おかしくなりそう」

 毎年4月になると、私たちの相談窓口には新入社員の方から必ずこのような相談が寄せられる。

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ブラック企業の上司や先輩がよく使うフレーズとは

 自ら疑問を抱いて相談をしてくれる方はまだいい。というのも、多くの新入社員は、上司や先輩から「社会ではこれが当たり前だ」と言われると、それを疑うことなく鵜呑みにしてしまう。

 初めての就職の場合、他の会社と比べることができず、会社の「常識」が社会一般に通用するルールのように思えてしまうからだ。

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 そこで本記事では、筆者が代表を務めるNPO法人POSSEの労働相談窓口に寄せられた事例なども交えながら、ブラック企業の上司や先輩がよく使うフレーズを紹介し、注意喚起したい。

 社内でこんな言葉が聞こえてきたら、一度、自身の労働条件や労働環境を客観的に見つめ直してみよう。

要注意フレーズ(1)「うちの業界では当たり前」

 ブラック企業で最も頻繁に用いられるフレーズだ。新入社員は、先輩や上司から繰り返しこの言葉を聞かされることになる。

 このフレーズがよく使われる典型的な業種が営業職だ。営業職の場合、「事業場外みなし労働時間制」や「固定残業代」が適用されているとして、残業代を支払わないケースが多い。

 これらの制度を適用するためには一定の法律上の要件を満たしていなければならないが、実態としては、要件を満たしておらず違法な運用がなされていることが多い。しかし、知識や経験のない新入社員は「そういうものなのか」と信じてしまうのだ。

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 具体例を挙げよう。

 大学卒業後、大手住宅メーカーに営業職として就職したAさん。入社の際、契約書を交わす段階になって、総務担当から「営業職には残業代が出ない」という説明を受けた。

 受け取った就業条件通知書には「事業場外みなし労働時間制」と書かれていた。求人情報には書かれていなかったし、面接や内定式でも全く聞いたことがない制度であった。先輩に聞くと、「営業はこういうものだ」「世の中の営業は全部そうなんだ」と教えられ、Aさんは納得した。