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特集新入社員へのメッセージ

2019/04/08

本当は違法であるというケースは非常に多い

 実際に働き始めると、朝8時から21~22時まで働く毎日だった。残業時間は月80時間を超えていたが、どれだけ働こうとも、営業手当の3万円以外に残業代が支払われることはなかった。

 長時間労働を続けた結果、Aさんは体調を崩し、「適応障害」「うつ病」と診断され、退職を余儀なくされた。

 こうした働かせ方は違法である可能性が極めて高く、残業代はもちろん、病気になったことにたいする損害賠償も請求できる。

 労働基準法をはじめとする「労働法」は、原則として全ての業種に適用される。「うちの業界ではこれが当たり前」と先輩に言われた場合でも、本当は違法であるというケースは非常に多い。気になった時には専門家に相談してほしい。

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要注意フレーズ(2)「君は裁量労働制だから残業代は出ない」

 今後、増えてくると思われるのが、このフレーズだ。上述した「事業場外みなし労働時間制」や「営業手当」などと称した「固定残業代」については、裁判で違法性が認定されたり労働基準監督署が是正勧告を行ったりするケースが増えている。

 そんななか、残業代を払わずに長時間労働をさせたいブラック企業が活用し始めているのが、この「裁量労働制」なのだ。

 裁量労働制は、業務に裁量のある労働者に対しては、労使で1日の「みなし労働時間」を決めてしまえば、実際に何時間残業しても、法的にはその時間分しか働いたことにならない制度である。

 4月1日に施行された働き方改革関連法によって残業時間の上限規制が導入されたが、裁量労働制が適用されている場合はこの規制を免れることができる。それゆえ、ブラック企業が上限規制を「脱法」する手段として、ますますこの制度が活用されることが予想されているのだ。

裁量労働制の多くは「違法状態」にあるが……

 しかし、裁量労働制は誰にでも適用できるわけではない。業務の進め方や労働時間の配分に裁量のある労働者にだけ適用できる。「実態」として裁量がなかったという証明ができれば、裁量労働制を過去に遡って無効として、実際の労働時間に基づいて残業代を支払わせることも可能だ。

 実際に、最近では、裁量労働制ユニオンが取り組んだ、プログラマーやデザイナー、芸能事務所のマネージャーなどの事件で、労働基準監督署が違法に運用された裁量労働制を無効と判断し、残業代を支払わせることに成功している。

 このように、裁量労働制の多くは「違法状態」にあるのだが、労基署にもその判断は難しく、違法状態は事実上野放しになっている。

 また、弁護士やユニオンでも、裁量労働制での争い方を経験していない場合がある(私たちの窓口には、適正に対応してもらえなかった方がしばしば訪れる)。労働法に詳しい「ブラック企業被害対策弁護団」や、裁量労働制を専門とする「裁量労働制ユニオン」に相談するのがお勧めである。