新たなウイルスが出現してくる危険性
世界的に感染が拡大する中で社会経済活動を続けながら感染をコントロールするためにワクチンの開発が進められています。通常のワクチン開発には最短でも数年かかります。健康な人たちを対象に広く接種されるワクチンにはその有効性・持続性と共に医薬品以上の安全性が要求されます。
今、開発されているDNA、mRNAワクチンは接種された体の中で感染防御に必要な抗原蛋白(たんぱく)が作られます。組換えウイルスベクターワクチンは遺伝子治療に使われているアデノウイルスを使っています。アデノウイルスのDNAの一部を欠損させて新型コロナウイルスのスパイク遺伝子DNAを挿入しています。接種されると細胞に感染しますが増殖することはなく蛋白を発現し免疫応答を期待するものです。現在までに報告されている副反応は従来のものと比べると発熱、倦怠感の全身反応や局所反応も強いようです。
免疫能の持続、長期間の有効性や安全性の確認が必要となります。どのワクチンがいいものかはまだわかりませんが、失敗してもその原因を科学的に検証し改良のためのデータを解析し次に備えるようにして欲しいものです。
コロナウイルスの元祖となるコロナウイルスは紀元前8000年頃にヒトが農耕生活を始めたころ牛、馬、イノシシなどの野生動物を家畜化したころに登場したと思われます。その後、哺乳動物に感染するα、βコロナウイルス、トリ型のγ、δウイルスに分かれて行きました。
コウモリは哺乳類の中でもげっ歯類(ネズミのグループ)に次いで多い動物種です。コウモリは進化の過程でたくさんのコロナウイルスを受け継いでおり、コロナウイルス以外にも、さらにニパウイルス、エボラウイルスといった病原ウイルスの貯蔵庫です。コウモリは食用にもされるようですが武漢の海鮮市場では取引されてはなかったようです。コウモリは口から超音波を出して位置確認しますが、その時に唾液の飛沫などでウイルスがばらまかれ中間宿主に感染して広がったと思います。
森林の開発や地球温暖化によりコウモリの好きな果実ができなくなったり、野生動物は餌場がなくなることでヒトの生活圏に入ってきます。人里離れた森の奥でヒトに接することなく循環していたウイルスがこれからも新たに出現してくる危険性があります。ウイルスと宿主のしのぎあいだけでなくこれからの感染症対策には社会経済、自然環境、動物の生態環境の変化にも考慮することが必要になります。