――本取材以前に、御社とアドレノクロムについての陰謀論を認識されていましたか。また、この陰謀論について、御社としてどう思われますか。
「当社が取り扱うアドレノクロムに関して、SNSを中心に事実とは異なる記載により、問合せを受けたことはあります。当社としては、海外メーカーにて化学合成により製造された試薬である旨を伝えております」
多くの企業にとっても他人事ではない
富士フイルム和光純薬では、以前からアドレノクロム言説についての問い合わせがあり、ネットでの言説は認知していたという。YouTube上にはアドレノクロムの取り扱い会社にいわゆる「電凸」をかけるユーチューバーも確認でき、ネット上の陰謀論に実在企業が登場した場合、広報部門に負担がかかると思われる。では、陰謀論で企業が損害を受けた場合はどうなるのか。
――陰謀論が御社の業績等に悪影響を及ぼした場合、法的措置は検討されますか。
「今後も、当社は、取り扱うアドレノクロムに関して正しい情報をお伝えしていきます」
ここまでが富士フイルム和光純薬の回答である。一貫して、ネット上の陰謀論言説を否定する内容となっているが、過去にも対応してきたと回答があり、その苦労がしのばれる。
だが、これは多くの企業・団体にとっても他人事ではない。日本の陰謀論界隈においては、富士フイルムの他に元ソニー会長の平井一夫氏、サンリオ創業者の辻信太郎氏、ZOZO創業者の前澤友作氏といった財界人もDSの人間であるとされ、政治家の9割、芸能人の半分がDSという主張が平然となされている。少しでも名が知られればターゲットとなる恐れがあるのだ。
TwitterやFacebookといったSNSでは、Qアノン陰謀論アカウントに対してアカウント削除等の厳しい姿勢で臨んでいることが報じられているが、英語アカウントはそうでも日本語アカウントの大多数は対応が追いついていない。また、国内でブログ等のサービスを提供している事業者に至っては、ほぼ野放しになっているのが実情である。
陰謀論で名前を挙げられた富士フイルムは陰謀論を明確に否定した。しかし、これは富士フイルム側の主張でしかないという反論があるかもしれない。そこで、後半ではもうひとつの当事者である陸上自衛隊への質問と回答、並びに北富士演習場周辺の現地取材を中心にお伝えする。