富士フイルムは「地下工場攻撃」説を明確に否定した。では、もう一つの当事者である陸上自衛隊はどうなのか。問題の北富士演習場は日米で共同利用される演習場だが、陸上自衛隊の北富士駐屯地が管理しているので、陸上幕僚監部広報室に問い合わせた。

 ここでもまた、担当官に「北富士演習場の地下に富士フイルムの秘密工場があって……」、「米軍のUFOがそこを攻撃して山火事が発生……」と真面目に説明する苦行が発生したが、なんとか趣旨を理解してもらい、質問事項を送付。また、可能なら北富士演習場の取材を申し入れた。しばらくして、次の回答を得ることができた。(全2回の2回目。#1を読む)

陸上幕僚監部も噂を否定

――北富士演習場内に薬品工場は存在するのか。

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「存在しません」

――北富士演習場の敷地内で民間企業が工場を建設することはあるのか。

「規則上、特定企業への提供は、公共性等に反することから建設は困難です」

――北富士演習場で米軍(又は共同して自衛隊)が上記工場を破壊した事実はあるのか。

「工場は存在しません」

 陸上幕僚監部の回答は富士フイルムのそれと同じく、噂を否定する内容となっている。だが、肝心の北富士演習場内の立ち入りについては、実弾射撃地という事情や訓練の関係から断られた。もっとも、これは想定内であった。演習場の中に入らなくても、確認できる方法はある。筆者は確認のため、北富士演習場のある山梨県に向かった。

外から丸見えの演習場

 自衛隊施設というと、秘密の何かを置くにはうってつけの場所に思えるかもしれない。しかし、北富士演習場に関して言えば、およそ隠れて悪事をするのに向いていない。北富士演習場は富士山のなだらかな山麓に位置していて、航空機を使用せずとも演習場内部が外部から見通せるのだ。

 目的の場所に着くよりも前、東富士五湖道路を車で走っていると、右手に北富士演習場と自衛隊車両が見える。東富士五湖道路は北富士演習場の脇を通っていて、走っているだけで演習場内が見えるロケ―ションである。

パノラマ台より北富士演習場を望む(筆者撮影)

 目的の場所は、山中湖を挟んで北富士演習場と向かい合うパノラマ台(山中湖)。富士山の絶景ビューポイントの一つとしても知られているスポットで、雪の早朝であるにも関わらず、周辺にはカメラマンがたむろしている。あいにく、富士山自体は雲がかかって見えなかったが、北富士演習場のほぼ全景を望むことができた。