望遠レンズや双眼鏡で確認してみたが……
北富士演習場は写真中央の草原を中心にして、その周囲の林から構成されている。中央左の薄く雪が積もっているあたりが火災のあった場所で、すなわち米軍に「攻撃」された地点だろう。そのあたりを中心に望遠レンズや双眼鏡で確認してみたが、戦闘の痕跡や地下構造物を破壊したような跡は見受けられなかった。そもそも、こんないつも人に写真を撮られているような場所で、大規模な悪事や戦闘を隠密裏に行うのは難しいと思うのだが……。
他のスポットでは違った光景が見られるかもしれない。今度は山中湖の水面近くから確認しようと、同じく富士山のビューポイントである山中湖交流プラザ「きらら」に向かった。駐車場に車を停めて湖畔に向かう途中、広場でカモたちが朝食中だったが、彼らの向こうに北富士演習場が見えるのどかな光景が広がっている。
湖畔の撮影ポイントに着くと、有名スポットだけあって、ここにも既にカメラマンがいた。こんなに四六時中カメラを向けられている場所で、秘密裏に地下工場を建設したり、戦闘を行う難易度は相当のものだろうと思いつつ、ここでも望遠レンズや双眼鏡で確認したが、特に怪しいところはない。ほとんどは野っ原だ。
この後も、北富士演習場周囲を回ったが、特に山中湖畔から丸見えの演習場であることを確認した。また、現在は冬季閉鎖中だが、ふじあざみラインで富士山須走口五合目まで登り、そこから徒歩20分ほどの小富士から北富士演習場をより近距離で見下ろすことができる。
結論としては、北富士演習場で大規模な戦闘や破壊の跡は確認できなかったし、そもそもここで秘密裏に大規模な悪事は困難だろう、ということだ。戦闘の後、3,000人の米軍兵士が証拠隠滅したという主張もあるが、外から丸見えな場所で3,000人が動いていたら丸わかりだし、そもそも証拠隠滅に動いていたことが知られているなら証拠隠滅の意味がない。
海兵隊公式アカウントのツイートが発端?
そもそも、こんな事を誰が最初に言い出したのだろうか? 前編でも触れたが、米海兵隊の公式Twitterアカウントが、次のようにツイートしたことが一つの契機と思われる。
Fuji Film
— U.S. Marines (@USMC) June 20, 2020
Marines prepare for a live-fire 61mm mortar range on Combined Arms Training Center Fuji, Japan, during Fuji Viper. The annual exercise sustains individual, platoon and small unit proficiency, and also small unit decision making. pic.twitter.com/ffjra0oqiF
米海兵隊兵士が迫撃砲の準備をしている写真をアップしているが、ここで「Fuji Film」と最初に書いてあるため、これを根拠にして「米軍が日本各地で囚われている子供たちを解放するために、北富士演習場で訓練している。コードネームは『富士フイルム』作戦」という飛躍した情報が拡散されている。
「Fuji Film」と書いてあるのは、単に富士の写真だからに他ならないと思うが……。また、このツイートで紹介されているのは海兵隊の諸兵科連合訓練センターで定期的に実施されるFuji Viperという演習の一コマであり、恒例行事に過ぎない。