あらゆる場面で「氾濫」しているかのように見える「させていただく」という表現。「させていただく」に対する世代別の受け止め方や近年の使われ方、「させていただく」人気の背景などについて、『「させていただく」の語用論—人はなぜ使いたくなるのか』著者の法政大学文学部教授・椎名美智氏に聞いた。
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2016年にSMAPが解散した際、ある言葉が話題になった。
「解散させていただきます」
いまやあらゆる場所で見かける「させていただきます」表現の一例だ。
言語学者である私が「させていただきます」という表現に興味を持ったきっかけは、ある敬語の講演会でのこと。講師の話が終わって質問タイムになると、年配の男性が手を上げてこう言ったのだ。
「先ほど会場の入り口で『受付表を確認させていただきます』と言われた。これは失礼な言い方ではないか? 偉くもない私を持ち上げたって、私は断れるわけでもないのに」
「させていただく」が高い頻度で使われると同時に、「させていただく」の氾濫を不愉快だと思っている人がいる。みんなが同じ受け止め方をしているわけではないということは、「させていただきます」が今まさに変化している表現だということなのだろう。
全世代、文法通りでない使用にも違和感はナシ
では、具体的に「させていただきます」の受け止め方にはどのような差があるのか。
10代から80代を対象に、約700人にさまざまな「させていただきます」の例文を見せ、それらに対する違和感を回答してもらうアンケートを実施したところ、意外なことがわかった。どの年代も、文法通りでない「させていただく」の使用にも違和感を感じていなかったのだ。