「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「ごめんなさい」と 「ありがとうございます」の黄金比
「『ありがとうございます』という言葉はクレーム対応では『申し訳ございません』と同じくらい大切な言葉で、同じくらい気を使わなければならない言葉ですよ」
「は、はい……」
いつになく真剣な、クレーム対応専門チームM井さんのレクチャーに、私は必死にメモ帳にペンを走らせた。
「前回、『具体的な言葉』+『謝罪』で謝るということを教えましたが、謝罪ばっかりだとやっぱりクレーム対応が単調になりがちなんです。そこで、謝罪の間にもう一工夫加えます。『ありがとうございます』という言葉をはさむんです」
(ク、クレームにお礼を言う!?)
またしても不可解なことを……とあわててメモする私。M井さんによれば、大抵のお客さまは私たちのカードに不満を持っていても、何も言わず解約してしまったりするから、クレームを言ってきてくれるお客さまは、ありがたいという。
謝礼とお礼を盛り込んだM井さん流のクレーム対応はこのようになるらしい。
「なんで何度も何度も電話かけてくるのよ! あんたたち、しつこいのよ!」
「ご迷惑をおかけします、でもちゃんと電話に出ていただいてありがたいです!」
「何度も電話してこなくていいでしょ!? 私は毎月遅れてもちゃんと入金してるんだから」
「いつもご入金いただいてありがとうございます。電話しつこくてすみません!」
「だいたいあんたたちの対応はなってないのよ!」
「貴重なご意見をくださりありがとうございます!」