「謝罪は何度も繰り返すと誠意が薄まるので、黄金比は、謝罪2に対しお礼1です。『申し訳ございません』が3回続くとくどいと考えてください。『申し訳ございません』を3回使っていいのは、クレーム対応を締めくくる時だけです」
なるほど~、確かに「仏の顔も三度まで」「三度目の正直」という諺がある。何事も3回までが許される限度のようだ。ただしラストはくどいくらいの謝罪のほうが余韻が残るので、あえて3回連続の謝罪で締めくくるのである。
言葉に気持ちを込める方法
「ところでN本さん、『ありがとうございます』って言ってみてください」
「? 『ありがとうございます』」
私が言われた通りお礼を言うと、M井さんは「うーん、あんまり気持ちの入ったお礼じゃないですね」と少し首をかしげた。
「『ありがとうございます』はありふれた言葉でお店でもどこでも言われます。聞かない日はありません。だから大げさなくらい気持ちを込めないと心を打たないんですよね。それには、イメトレが大事です」とM井さんは続けた。
「たとえば今目の前で一番大事な人が、瀕死の状態だと想像する。その人にはもう一生お礼が言えませんよ、最後だと思ってありがとうと言ってみてください」
(!!)「あ……ありがとう」
瀕死の母(!)を思い浮かべて言うと、自然と口から感情の籠った言葉が出てきた。
「いいですね! それじゃあ次は自分が死ぬバージョンをイメトレしてみましょう。はい、次は数日間何も食べてないところに食べ物を恵んでもらったシチュエーションで、『ありがとう』!」
「あ、ありがとうございます~」
ちなみに私は今も、感情を込めてお客さまにお礼を言う時は、目の前に瀕死の母の顔を思い浮かべるという親不孝なことをしている。でも、お客さまに言う「ありがとう」も、最後に大切な人に伝える「ありがとう」も、言葉は同じなのだ。だったら響きも同じであってもいいのかもしれない。