8ミリ映画『東京白菜関K者』が大島渚、長谷川和彦らに激賞され、ぴあフィルムフェスティバルで入選した緒方明監督。再び石井組に戻って『爆裂都市 BURST CITY』に参加するも、現場はまた大混乱を来した。やがて緒方監督は、石井監督と激しく衝突してしまう。(全4回の3回目/4回目に続く)
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『爆裂都市』が大失敗した理由
――その後、また石井組ですね。
緒方 そうですね。『爆裂都市 BURST CITY』が動き始めていました。今度はダイナマイト・プロとして、東映からウン千万かもらって、作るという。これが大失敗に終わるわけですよね。
――石井さんからもお聞きしましたけど、緒方さんの目からはどんな現場に見えたんですか?
緒方 やっぱりアマチュアは駄目だなと僕は思いましたね。つまり、撮りたい画、撮りたいコンテを撮るのが映画監督ではなくて、ちゃんとスケジュールを読めて、そこにはめていくことも含めて映画監督なんだと。だから、総合スケジュールが出た時に読めないといけない。例えば5000万なら5000万で撮ると。5000万で撮るということは、ロケーションは何日で、どれぐらいの規模であるということを監督は分かってないといけないんだなと思って。石井さんも頭では分かっているんですよ。だけど、助監督経験がないから、体では分かってない。それじゃあやっぱり自主映画って駄目なんだなと。
俺たちで、それこそエキストラがウン百人毎日来て、毎晩徹夜でやっていて、もう仕切れないわけですよね。自分らの限界を超えている。よくやったとは思うんですけれども、映画の組として成立してないわけですよね。そこは石井組は弱いなと思いました。情熱だけでは映画は作れないという現実に気づかされた。映画というのは組でやる。監督が組を成立させる。そこが一番大事なんだと。自主映画というのは、監督のやりたいことをやらせるわけですよね。でも、監督のやりたいことをやるというのが映画のすべてではないと僕は今も思っていますから。
――やろうとしている内容が予算とか日数と全然違ったということですか。
緒方 5000万の予算で1億のことをやろうとすれば、それは破綻します。つまり、何をやって何をやらないのかということのハンドリングというか、コントロール能力というのかな。監督ってそういうことだと思うんですよね。予算を守った上で、日数を守った上で、その中でどう差配していくかということが監督なので。だから、『爆裂都市』は敗北宣言ですよね。ただただ勢いと情熱だけでやってしまった。勢いと情熱だけで『東京白菜関K者』や『サンダーロード』は作れても、それ以上のものは作れなかったということでしょうね。そこはやっぱり日本映画が、当時で70~80年かけて作ってきた作り方の伝統というものは、ちょっとやそっとじゃぶっ壊すことはできないんだなということはすごく感じました。