石井聰亙(岳龍)監督に出会い、『狂い咲きサンダーロード』の現場にチーフ助監督として放り込まれた緒方明監督。ピンク映画の助監督としても経験を積み、ついに撮った8ミリの初監督作『東京白菜関K者』は、「朝起きたら白菜男になっていた」という衝撃的な作品。ぴあフィルムフェスティバルで激賞されることになる。(全4回の2回目/3回目に続く) 

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『サンダーロード』の仕上げでプロの映画作りを学ぶ

緒方 『狂い咲きサンダーロード』はラッシュの段階で東映に見せたら評判がよかったので、全国の東映系で上映が決まって。だから、仕上げは後半から東映の大泉撮影所内の仕上げの棟でポスプロやるようになったんです。そこで編集とかダビング(注1)を手伝って。それは楽しかったですね。音楽も泉谷しげるさん、PANTAさんの曲を使えることになって選曲を僕に任せてくれたり。仕上げになると僕と石井さんの2人でやっていて。笠松さんはネガ編なんかをやってましたけど。その時に一番すごいなと思ったのは、プロの方たちのポスプロの音付けの仕方、効果音(足音や衣ずれの音)のアフレコやったりシネテープにマルを付けたりとか、編集の仕方とか、ダビングのやり方とか、「ああ、こうやってやるんだ」と。僕らが片隅で編集をやっていたりすると、他のテレビの組がお弁当を差し入れてくれたりとかね。映画人っていいなと思いましたね。

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緒方明監督 ©藍河兼一

――そこが映画の学校でもあった。

緒方 そうですね。石井さんは精神みたいなことは教えてくれるけれども、テクニカルなことは教えてくれないんですよね。プロの現場というのはこうやってやるんだと。そこに来ている助監督さんなんかを見ていると、スケジュールというのはこうやって書くんだと。毎日予定表というものを出すんだと。映画のプロの世界というのはすごいなと思いましたね。ですので、『サンダーロード』が完成して、ちょっとお金もあって部屋も借りたりして、その時にピンク映画の助監督に行くんですよね。ピンクの助監督はわりと入りやすかったので。

――どの辺の監督の作品ですか? 

緒方 たぶん言っても全然知らない、大蔵映画の監督。もうとっくに亡くなってますけど。ピンクの中でも序列があって、当時高橋伴明さんとか中村幻児さんとかあの辺は上なんですよ。普通はピンクは4日で撮ってましたけど、3日で撮りますみたいな、超低予算の現場に行って。助監督は1人ですよ。いろんな監督からやり方を教えてもらって。ロケハンなんかも全部自分でやって、ちょっと仕切れるようになった。そうすると、ピンクの中でも格上になって、新東宝の小水一男さん、ガイラさんのところにセカンドで付いたりするようになりました。そうして少しずつ仕事を覚えていくんです。それは楽しかったですね。